「F1マシンって中古で買えるのか?」と一度でも思ったなら、結論は“買えるが現実的ではない”となる。だが、個人でも現実的に買える中古フォーミュラカーは存在し、相場は80〜200万円前後から動くこともある。
本記事では、私がフォーミュラを2台購入・売却した実体験をもとに、買い方(チーム経由/個人売買)・価格相場・失敗しない確認点(整備先と保管先)を、遠回りなしで整理する。

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【結論】フォーミュラカー中古は個人でも買える|最初に確認すべき3条件
フォーミュラカー中古は個人でも購入可能だが、整備先・保管先・運搬の3点確認が必須となる。
フォーミュラカーというと「特別な人しか買えない」「チーム専用の車」という印象を持たれがちだが、実際には一般のモータースポーツファンでも購入できる。中古市場ではシーズン終盤になると出物が増え、状態の良い個体を比較的安く手に入れられる時期でもある。
購入方法は大きく分けて「レーシングチーム経由」と「個人売買・オークションサイト経由」の2パターン。どちらも適切な確認さえすれば安心して取引が可能だ。
さらに、保管場所やメンテナンスの問題も、レーシングチームのガレージを活用すればハードルは高くない。つまり、フォーミュラカーは決して遠い存在ではなく、“正しいルートを知っていれば誰でも手に入れられる”ということだ。
フォーミュラカー中古の値段は?相場80〜200万円の現実と購入例
フォーミュラカー中古の相場は入門クラスで80〜200万円前後が現実的な目安である。
プロフィール等でも少し触れているが、筆者はこれまでに2台のフォーミュラカーを購入したことがある。まずはこの2台の購入経緯を紹介しようと思う。
FJ1600:東京R&D FV2K

1台目に購入したのは、東京R&D製の「FV2K」というFJ1600カテゴリーの車両だ。当時はまだJAF公認レースに出場しておらず、レースに出ている知り合いがお世話になっているレーシングガレージから80万円ほどで購入した。約3年ほど所有してレースに出場していたが、FJ1600のカテゴリーが消滅してしまったため、売却した。売却先は、独立してレーシングガレージを立ち上げたメカニックの方である。
スーパーFJ:WEST 07J

2台目は、ウエストレーシングカーズ製の「WEST 07J」というスーパーFJカテゴリーの車両だ。同じガレージでレースに出場していた先輩ドライバーから100万円ほどで購入した。こちらは約2年ほどレースに出場していたが、成績が振るわなかったことと、メンテナンスにかける時間の確保が難しくなったため、売却した。売却先は、こちらも新たにレーシングガレージを立ち上げたメカニックの方である。
▶用語解説:「スーパーFJとは?」
フォーミュラカー中古は個人所有できる?チーム所有との違い
フォーミュラカー中古は個人所有でき、整備と保管をチームに委託する形が一般的である。
レースの世界に詳しくない方は、「フォーミュラカーってどんな人が所有しているのか?」と、そこから疑問を持つと思う。まずはその点から説明しよう。フォーミュラカーの所有者は、大きく下記の2パターンに分けられる。
レーシングチームが所有
ひとつ目は、レーシングチーム(レーシングガレージと呼ぶこともある)が所有しているパターン。この場合は、チームがドライバーに貸し出して乗ってもらう、チームがドライバーを雇って乗ってもらう、あるいはチームオーナー自身がドライバーの場合はオーナーが乗るなど、さまざまな運用がされている。
個人が所有
ふたつ目は、個人が所有しているパターン。レーシングカーの所有権は個人が持っており、レーシングガレージにお金を払って保管やメンテナンスを依頼するといった運用をしている場合が多い。もちろん、完全に個人で保管しメンテナンスを行っている人もいる。
フォーミュラカー中古の注意点|安く売られる理由と使われなくなる車両
フォーミュラカー中古が安いのは需要減と規則変更が主因で、希少価値は高くない。
普段レースの世界にいない人は知る由もないかもしれないが、フォーミュラカーなどのレーシングカーは、実はガレージの奥で埃をかぶって眠っていることが少なくない。特に最前線で戦えなくなったり、レギュレーションの都合で使えなくなったり、カテゴリーが消滅したフォーミュラカーは、言い方は悪いが、ほぼ粗大ゴミのような存在となっている。
レーシングチームが所有している車両であれば、部品取りにされたり、売却されたり、処分されたりすることも可能だが、個人が所有し、レーシングチームに保管を委託している車両に関しては、勝手に部品を取ったり、売ったり、処分したりはできない。所有者としても売却先を探すのが面倒で、保管料だけで維持できるならいいかという具合に、延々と使われないフォーミュラカーがカバーをかけられたまま眠っている。
つまり、フォーミュラカーは決して“貴重なクルマ”というわけではない、ということを知ってもらいたい。
フォーミュラカー中古はオークションで買える?注意点と判断基準
結論を先に書くと、オークション購入は可能だが、管理チームが不明な個体は避けるべきである。
SNSなどを見ていると、たまにフォーミュラカーをオークションサイトで見つけた、という投稿が流れてくる。これらのオークションサイト経由でのフォーミュラカー購入が「あり」か「なし」かで答えると、基本的には“あり”だ。
最初に説明した通り、フォーミュラカーの所有者は「チーム所有」か「個人所有」のどちらかとなる。「チーム所有」の場合は、ほぼお店から車両を購入するのと変わりはない。「個人所有」の場合も、ほとんどのケースではメンテナンスを委託しているレーシングチームがあるはずなので、購入後の保管場所やメンテナンスで困ることはないだろう。
注意が必要なのは、完全に「個人所有・個人保管・個人メンテナンス」の車両だ。この場合は、購入後の運搬や保管、メンテナンスに大きな課題があるため、最初の1台目として選ぶのは避けたほうがいい。見分ける方法としては、車両をメンテナンスしているチーム(ガレージ)を出品者にストレートに尋ねてみよう。それだけでリスクを回避できる。
フォーミュラカー中古の探し方|サーキットで聞くのが早い理由
実はフォーミュラカー中古はサーキットで直接聞くのが最短ルートになりやすい。
オークションサイトでお目当ての車両を見つけるには、運が必要だ。手っ取り早く目当ての車両を探すなら、サーキットに行って直接聞いてみるのが早い。レース日でも練習走行日でも構わないので、パドックやピットにいるメカニックの人に直接聞いてみよう。
おそらく最初は驚かれると思うが、そのチームでフォーミュラカーを扱っていれば教えてくれるし、扱っていなければ、どのチームの誰に聞けば詳しいかを教えてくれるはずだ。
フォーミュラカー中古の保管場所と維持費はいくら?年20〜30万円の現実
フォーミュラカー中古はチーム保管が一般的で、保管費は年20〜30万円が目安となる。
フォーミュラカーを保管するには、屋根付きのガレージが必須となる。屋根付きのガレージが自宅にない人も、心配する必要はない。フォーミュラカーは、レーシングチーム所有のガレージや倉庫に保管するのが基本だ。
ごく稀に自宅ガレージで整備している人もいるが、レーシングチームで保管している人が大多数である。保管料金は立地や待遇にもよるが、年間20〜30万円程度で保管してくれる場所が多いはずだ。フォーミュラカーを所有する際に最初に気になるであろう「保管場所」は、実はそれほど難しい問題ではない。
フォーミュラカー中古の整備は誰がやる?プロ任せと自分整備の現実
整備はプロ任せが安全だが、最大コストは工賃より時間確保にある。
むしろ難しいのは、メンテナンスを誰が行うかという点だ。メンテナンスに関しては、すべてレーシングチーム所属のプロメカニックに任せる場合、自分で整備する場合、そして簡単な整備は自分で行い、重整備はプロに依頼する場合の3パターンがある。
では、フォーミュラカーを誰でも整備できるのかというと、簡単なメンテナンス(オイル交換やエア抜きなど)であれば、整備の基礎知識があれば誰でも可能だ。少し難しい整備や修理に関しても、大きなラジコン感覚で行える部分もあり、チームの人に教わりながらならできなくもない。
ただし、一番どうにもならないのが“時間”だ。先に紹介した通り、フォーミュラカーはチームのガレージに保管されているため、いつでも気軽にメンテナンスできるわけではない。週に1回メンテナンスに行ければ多い方であり、走行が近づくとその頻度では時間が足りないと感じることも多い。さらに、移動にかかる交通費も無視できないコストとなる。これらを天秤にかけて、プロに依頼するか自分で行うかを判断してもらいたい。
今、狙い目のフォーミュラカー中古は?VITA旧エンジンとスーパーFJ
現状の狙い目はVITA旧エンジン仕様と移行期のスーパーFJだろう。
VITA(旧エンジン仕様)

一番おすすめしたいのは、VITAの旧エンジン仕様と呼ばれる車両だ。VITAそのものが、ハコ車とフォーミュラの中間的な立ち位置にあり、これまでフォーミュラに乗ったことがない人でも扱いやすい車両に仕上がっている。そのVITAの旧エンジン(NCP13)仕様は、レースによっては「出場できない」または「戦闘力がない」ため、ほとんど使用されていない。中古車の価格も新エンジン(NCP131)仕様と比べると50〜100万円ほど安い。ホビー用途として購入するも良し、一部のサーキットではレースに出ることもできるし、100万円そこそこで新エンジンに換装することも可能だ。購入後の選択肢も多く、おすすめの車両である。
▶用語解説:「VITAとは?」
スーパーFJ

2026年から、スーパーFJは「FJ1500」という新しいカテゴリーに移行することが発表されている。とはいえ、FJ1600からスーパーFJへの完全移行にも3〜4年ほどかかっていたことを考えると、今回もスーパーFJのレースは少なくとも2年、長ければ4年は開催されると筆者は予想している。新カテゴリーへの移行期間は、旧カテゴリーのマシン価格が一気に下がるため、まさに狙い目である。2年間だけと割り切ってフォーミュラに挑戦するには、絶好のチャンスだ。
▶用語解説:「スーパーFJとは?」
F3や元F1マシンは中古で買える?維持費が別世界な理由
F3や元F1マシンも購入可能だが、維持費は入門フォーミュラと比べると別世界になる。
この記事を読んでいる方の中には、「スーパーFJやVITAではなく、もっと上位カテゴリーのフォーミュラカーは買えないのか?」と気になっている人もいるだろう。
結論から言えば、旧型のF3やかつてのF1マシンなど、より上位カテゴリーの車両も購入は可能だ。購入の流れ自体は基本的に同じであり、変わるのは車両価格とメンテナンス費用が桁違いに高くなるという点だけである。具体的には、費用が1〜2桁増えると考えておいたほうがいい。
サーキットを長年走っていると、そうしたマシンを趣味で所有し、実際に走らせている人に出会うこともある。つまり、昔憧れていたフォーミュラカーを手に入れて走ることも、決して不可能ではない。
フォーミュラカー中古購入Q&A|よくある質問まとめ
中古フォーミュラ購入の疑問は価格・所有・整備体制に集約される。
Q1. フォーミュラカー中古はいくらくらいで購入できる?
フォーミュラカー中古の価格は、カテゴリーや状態によって大きく異なるが、入門クラスであれば80万〜200万円前後がひとつの目安となる。
実際に筆者が購入したFJ1600は約80万円、スーパーFJは約100万円ほどであった。
VITA旧エンジン仕様など、競技での主役を退いた車両であれば、比較的安価に流通しているケースも多い。
ただし、車両価格とは別に、保管費用やメンテナンス費用が継続的に発生する点には注意が必要である。
Q2. フォーミュラカーは個人でも所有・購入できる?
結論から言えば、フォーミュラカーは個人でも問題なく所有・購入できる。
実際、市場に出回っている中古フォーミュラカーの多くは個人所有の車両であり、購入後はレーシングチームのガレージに保管・整備を委託する形が一般的だ。
自宅にガレージがなくても所有は可能であり、「個人では無理」というイメージは誤解であると言える。
Q3. 中古フォーミュラカーを買って失敗しやすいポイントは?
初心者が最も注意すべきなのは、購入後の保管・メンテナンス体制が不明確な車両を選んでしまうことだ。
特に「個人保管・個人整備」で履歴が不透明な車両は、購入後に想定外のトラブルが発生しやすい。
出品者に対して「現在どのレーシングチームで管理・整備されているか」を確認するだけで、リスクは大きく下げられる。
価格の安さだけで判断しないことが、失敗しないための最大のポイントである。
Q4. オークションサイトでフォーミュラカー中古を買っても大丈夫?
オークション経由での購入自体は**決して珍しいことではなく、条件次第では十分に“あり”**である。
重要なのは、車両を実際に管理・整備しているレーシングチームが存在するかどうかだ。
チーム管理下の車両であれば、購入後の保管や整備の相談もしやすく、安心して所有を始められる。
一方で、完全な個人管理車両は初心者にはハードルが高いため、最初の1台としては避けたほうが無難だろう。
Q5. フォーミュラカーを買ったあと、すぐにレースに出られる?
車両自体は中古で購入できても、すぐにレースへ出場できるかどうかはカテゴリー次第である。
レギュレーション変更により、旧エンジン仕様では出場できないレースも存在する。
ただし、走行会や一部のイベントでは問題なく走れるケースも多く、ホビー用途として楽しむ分には十分だ。
レース出場を前提に購入する場合は、事前に参加予定カテゴリーの規則を確認することが重要となる。
まとめ|フォーミュラカー中古は誰でも現実的に始められる
正しいルートを知れば、フォーミュラカー中古購入は特別な挑戦ではない。
フォーミュラカーの世界は一見ハードルが高そうに見えるが、実際には購入ルート・保管・整備環境のどれもが整っており、思っているよりずっと身近な存在である。レーシングチームの協力を得ながら少しずつ学んでいけば、誰でも安全にフォーミュラカーライフを始められる。
今の時期は中古車の流通量も増えるタイミング。とくに旧エンジン仕様のVITAや、移行期を迎えるスーパーFJなどは絶好の狙い目だ。フォーミュラカーを所有することは、ただの“夢”ではなく、現実的な第一歩を踏み出せる選択肢のひとつである。






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