先日、実家の引き出しを整理していたら、祖父から譲り受けた自動巻きの機械式時計が出てきた。もう60年近く前のものだ。動くはずがないと思いながら軽く振ってみると、秒針がすっと動き出した。半世紀以上も前に作られた機械が、今もちゃんと時を刻んでいる。その事実に、思わず手を止めた。
同時にふと考えた。では、クルマは半世紀以上乗り続けられるのだろうか。時計と同じように、大切に扱えばそれだけ長く付き合えるものなのだろうか。
この記事では、クルマそのものの耐久性の話にとどまらず、なぜ現実には長期間ひとつのクルマを所有し続けることが難しいのか、その理由を自分自身の経験から考えてみたい。
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結論|クルマを長く所有する最大の壁は維持費
先に結論を書いてしまうと、クルマそのものは、適切に整備を続ければ半世紀以上動かし続けることも不可能ではない。エンジンやボディは、手をかければかけただけ応えてくれる部分がある。
問題になるのは「動くかどうか」ではなく「所有し続けられるかどうか」だ。自動車税、車検、任意保険、駐車場代、修理費。クルマは所有しているだけで、継続的にお金がかかり続ける乗り物だ。しかも古いクルマほど税負担が重くなる制度があり、それが長期保有の大きなハードルになっている。
つまり、クルマの寿命を決めているのは、機械的な寿命だけではないということだ。
筆者は物持ちはいいが、クルマは7年が最長

これまで何台かのクルマに乗ってきた。ロードスターに約5年、祖父から譲り受けたスイフトに約4年、会社の先輩から譲ってもらったプリメーラワゴンに約4年、新車で購入したルーテシアに約7年。そして今は、スクラムに乗り換えて約2年になる。
こうして並べてみて気づいたことがある。自分は基本的に物を長く使うタイプなのに、クルマだけは10年以上乗り続けた経験が一度もない。しかもこれは単純に「飽きたから」という理由だけでは説明がつかない。
クルマ以外は長く使うモノが多い

たとえば時計。中学生の頃に買ったG-SHOCKは、かれこれ30年近く使い続けている。財布も約15年前に買ったものを、用途を変えながら今も使っている。トラベラーズノートも同じく約15年前から現役だ。レース活動で使うギア類も、規格が変わって使えなくなったもの以外は、10年以上愛用しているものが多い。
つまり「気に入ったものは長く使う」というのが、自分の基本的な性格らしい。なのになぜ、クルマだけは長期保有ができていないのか。ここに素朴な疑問が生まれる。
なぜクルマの買い替えサイクルは早いのか?
ライフスタイルの変化で必要なクルマが変わる
20代前半の頃は2シーターのロードスターでも何の不便もなかった。ところがレース活動を始めると、タイヤや工具といった荷物を積む必要が出てきて、より実用的なプリメーラワゴンへと乗り換えることになった。
30代になると、さすがに改造した中古車に乗り続けることへの抵抗も生まれ、新車のルーテシアを選んだ。そして現在は、アウトドアや荷物の積載を考えて、スクラムを使っている。
クルマは生活の土台だから「買い替え」が発生する
時計や財布であれば、ライフスタイルに合わなくなっても、とりあえず保管しておけばいい。使わない期間があっても、それほど困らない。
しかしクルマは日常生活に直結している道具だ。使い勝手が悪くなれば、それは毎日の不便に直結する。だからこそ買い替えを検討せざるを得ない。転勤、結婚、出産、子どもの成長。こうしたライフイベントがあるたびに、必要なクルマの形は変わっていく。
時計や財布は長く使えるのに、クルマでは難しいのはなぜか?
時計にしても、G-SHOCK、祖父から譲り受けたアンティーク時計、そしてApple Watchと、その時々で使い分けてきた。財布もキャッシュレス化が進んで出番は減ったが、完全に手放す必要はなかった。
つまり「一生ひとつを使い続ける」のではなく、「気に入ったものを、必要なときにまた取り出して使う」という付き合い方ができている。
ここに、クルマとの決定的な違いがある。クルマには、使わない期間も所有しておくこと自体に、大きなコストが発生するのだ。
維持費がかかるため「手放す」という選択になる
クルマは保管するだけでもお金がかかる
時計や財布なら、引き出しにしまっておくだけで済む。しかしクルマはそうはいかない。まず駐車スペースが必要になる。自宅の敷地に置けなければ、月極駐車場などの費用が毎月発生する。使っていなくても、所有しているだけでコストがかかり続けるのだ。
税金・車検・保険が所有し続けるハードルになる
自動車税は毎年発生する。車検も定期的に必要で、そのたびにまとまった費用がかかる。任意保険も維持していくにはお金がいる。しかも一定年数を超えた古いクルマには、自動車税・軽自動車税などが重くなる仕組みもある。
「いつかまた乗るかもしれない」という理由だけで所有し続けるには、あまりに負担が大きい。結果として、どんなに気に入ったクルマでも「手放したほうが合理的」という判断に傾きやすくなる。
クルマ好きの理想は「2台持ち」
ここまで考えてくると、ひとつの理想が見えてくる。長く乗りたいクルマと、日常で使う実用車を分けて持つという考え方だ。
1台ですべてを満たそうとすると、ライフスタイルの変化のたびに買い替えることになる。しかし2台あれば、趣味性の高いクルマを手元に残しながら、日常用のクルマだけをその時々のニーズに合わせて入れ替えていける。
自分の場合、理想はFRかMRのスポーツカーと、アウトドア系の4WDの組み合わせだ。スポーツカーは長く所有し、実用車のほうだけを生活の変化に合わせて乗り換えていく。そんなイメージだ。
ただし、ここでも最大の壁になるのは、やはり2台分の税金・保険・車検・駐車場といった維持費だ。結局のところ、クルマ好きにとって税金は大きな敵であると、あらためて思い知らされる。
まとめ|クルマの寿命を決めるのは「壊れるか」だけではない
クルマは、整備を続ければ半世紀以上使える可能性を秘めている。しかし現実には、ライフスタイルの変化と維持費という2つの要因が、長期保有を難しくしている。
時計や財布と違い、クルマは「使わない間も持っておく」ということ自体にコストがかかる乗り物だ。だからこそ、古いクルマを何十年も所有し続けるということは、機械的な耐久性以上に「所有し続ける覚悟」を必要とするのだと思う。
個人的には、いつか本当に気に入ったスポーツカーを手に入れて、実用車との2台体制で長く付き合ってみたいと考えている。
「クルマは何年乗れるのか」ではなく、「何年乗り続けたいと思えるのか。そして、それを許してくれる維持環境があるのか」。そんな視点で、これからのクルマ選びを考えていきたい。

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