先月にホンダから N-ONE e:、今月に日産から新型リーフと、国産のBEVが立て続けに二車種発表された。EVの車種ラインナップは、欧州のBEVが大量に日本投入されて以降、数が多すぎてチェックしきれていなかったのだが、久々に気合の入った国産BEVが登場したと聞いたので、重い腰を上げて日本のEV市場がどうなっているのかを調べてみた。
EV肯定派・否定派、いろいろな意見はあるとは思うけれど、ラインナップを知らなければ語ることもできないということで、参考にしてもらえたらと思う。そして、もし自分がこのラインナップの中から1台選ぶならどれがいいのかも――その理由とセットで紹介したいと思う。
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結論|今、日本で選ぶなら「N-ONE e:」が最も現実的で魅力的

現在の日本のEV市場は、プレミア志向・実用志向・シティコミューター志向の三極に分かれている。
その中で“もっとも現実的な選択肢”として光るのが、ホンダの N-ONE e: である。航続距離295kmという数値は、日常使いには十分。軽自動車という制約の中で、電費・軽量化・価格のバランスをここまで最適化してきたのは見事。
“気合の入った国産BEVがついに出てきた”という意味で、N-ONE e: は2025年のEV市場におけるターニングポイントとなるモデルだと思う。
では、なぜそう思ったのかを順を追って説明していく。
日本の正規デーラーで購入できるBEVリスト
まずは、2025年10月現在、日本で購入できるBEVをリスト化した。その数、なんと44車種。ひょっとしたらピックアップできなかった車種もあるかもしれないが、漏れがあったらすまん。航続距離と価格もセットでリストアップしたので、まずは雰囲気をつかんでほしい。
メーカー | 車名 | 航続距離 (WLTC km) | 税込価格 (円) |
---|---|---|---|
日産 | サクラ | 180 | 2,599,300 |
日産 | リーフ(B7) | 702 | 5,188,700 |
日産 | アリア(B6) | 470 | 6,590,100 |
日産 | アリア(B9) | 640 | 7,382,100 |
三菱 | eKクロス EV | 180 | 2,568,500 |
三菱 | ミニキャブEV | 180 | 2,431,000 |
ホンダ | N-ONE e: | 295 | 2,699,400 |
ホンダ | N-VAN e: | 245 | 2,699,400 |
トヨタ | bZ4X | 559 | 5,500,000 |
スバル | ソルテラ | 567 | 6,270,000 |
レクサス | RZ 300e | 599 | 8,200,000 |
レクサス | RZ 450e | 494 | 8,800,000 |
テスラ | モデル3 (スタンダード) | 547 | 5,313,000 |
テスラ | モデル3 (ロングレンジ) | 635 | 6,219,000 |
テスラ | モデルY(スタンダード) | 547 | 5,587,000 |
テスラ | モデルY(ロングレンジ) | 635 | 6,476,000 |
フォルクスワーゲン | ID.4 Lite | 435 | 5,142,000 |
フォルクスワーゲン | ID.4 Pro | 618 | 6,488,000 |
アウディ | Q4 e-tron(45) | 613 | 7,100,000 |
アウディ | Q8 e-tron(50) | 451 | 10,990,000 |
アウディ | e-tron GT | 534 | 14,940,000 |
メルセデス・ベンツ | EQA | 591 | 7,710,000 |
メルセデス・ベンツ | EQB | 557 | 8,110,000 |
メルセデス・ベンツ | EQE | 542 | 12,940,000 |
メルセデス・ベンツ | EQS | 692 | 16,290,000 |
BMW | iX1 | 465 | 6,690,000 |
BMW | i4 | 595 | 9,220,000 |
BMW | i5 | 648 | 10,280,000 |
BMW | iX | 723 | 14,980,000 |
BMW | i7 | 650 | 18,060,000 |
MINI | Aceman | 327 | 5,130,000 |
ボルボ | EX30 | 560 | 4,790,000 |
ボルボ | EX40(Twin参考) | 590 | 7,490,000 |
BYD | DOLPHIN(スタンダード) | 415 | 2,992,000 |
BYD | DOLPHIN(ロングレンジ) | 476 | 3,740,000 |
BYD | ATTO 3 | 470 | 4,180,000 |
BYD | SEALION 7 | 590 | 4,950,000 |
BYD | SEAL | 640 | 5,280,000 |
ポルシェ | マカン EV | – | 10,380,000 |
ポルシェ | タイカン | – | 14,530,000 |
プジョー | e-208 | 395 | 5,124,000 |
プジョー | e-2008 | 380 | 5,764,000 |
シトロエン | ë-C4 Electric | 405 | 5,654,500 |
フィアット | 500e | 335 | 5,770,000 |
フィアット | 600e | 493 | 5,550,000 |
アバルト | 500e | 303 | 6,150,000 |
ヒョンデ | INSTER | 427 | 2,849,000 |
ヒョンデ | IONIQ 5 | 703 | 5,236,000 |
ヒョンデ | KONA Mauna Loa | 625 | 4,950,000 |
ロータス | Eletre | 570 | 15,158,000 |
BEV市場は三極化している
ざっと価格帯と航続距離、モーター出力、電費などを比較すると、日本のBEV市場は大きく3つに分類される。
実用性重視のコンフォート路線(価格帯:500~1000万円)
街乗りから遠出まで可能な航続可能距離を持つメインカーとして使用することを想定したクルマ。代表的な車種としては、日産リーフ、トヨタbZ4X、テスラ モデル3/Yなどがある。
実用性度外視のプレミア路線(価格帯:1000万円~)
価格が1000万円を超え、不必要なまでのパワーとバッテリー容量、車内外の豪華さを持ったプレミアムカー。代表的な車種としては、ポルシェ マカン/タイカン、アウディ Q8 e-tron、BMW i7などがある。
軽量・コンパクトのシティコミューター路線(価格帯:~300万円)
最後は日本独自規格の軽EV路線だ。軽量・コンパクトで低価格帯だが航続距離は短く、ロングドライブに使うには工夫が必要となる。代表的な車種としては、日産サクラ、ホンダN-ONEe:などがある。
コンフォート路線は航続距離競争の真っ只中

日産リーフの航続距離が700km超えへ!
今月発表された新型リーフの航続距離が、WLTCモードでついに700kmを超えた。この航続距離がどれだけ実用的な数値なのかは疑わしいところで、私の知り合いのEV所有者たちは口をそろえて「実用はカタログ値の半分くらい」と言っている。だから実際の航続距離は350kmほどと考えるのが妥当だろう。さらに寒冷地の真冬では0.8掛けくらいの航続距離に落ち込むそうだ。とはいえ、300km走ることができれば実用としては十分だろう。
同時に価格は500万円超えへ!
テスラが登場して以来、EVは航続距離競争に突入した。効率よりも「いかにバッテリーを多く積むか」が注力され、バッテリーのレイアウトの都合で、ほとんどの車種がSUVライクなデザインとなってしまった。バッテリーの大型化は車両価格にも影響し、初代リーフが273万円で買えたのに対して、新型は倍近くの500万円オーバーとなってしまった。もちろん500万円にふさわしい内外装デザインをまとってはいるが、500万円のリーフを求める人はごく少数なのではないかと思わざるを得ない。
航続距離競争の終焉に期待!
そんな航続距離競争も、そろそろ終焉を迎えるのではないかと予想している。というか、終わってくれ。これまではユーザーが求める航続距離に達していなかったから、バッテリー容量増を求められたのは理解できる。ただ、必要十分なレベルに達したのであれば、ここからは低電費化や小型化に移るのが自然な流れだろう。同時に価格も下げていってもらえると嬉しいところだ。ただスマートフォンのバッテリー容量競争を見ていると、1日十分に使えるバッテリーが搭載されても、まだ増え続けているので同じ道を辿るかもしれない。
高効率を求める軽EV

軽自動車規格という制約が技術力を高める
それに対して、軽自動車のBEVは様子がかなり違う。普通車と違って軽自動車はクルマの大きさの規格が決まっている。つまり、決められた空間の中でバッテリーを搭載しなければならないため、普通車のようにバッテリー容量を一気に増やして航続距離を伸ばすには限界がある。そのため、バッテリーをいかに効率よく積むか、いかに低電費性能を高めるか、いかに軽量化するかといった、自動車メーカーらしい技術力競争が始まりつつある。
予想以上にすごかったN-ONE e:
「始まりつつある」と言ったのは、これまでは商用EVを除くと乗用の軽EVは日産サクラ(およびeKクロス)しか存在しなかったからだ。そこにホンダがN-ONE e:を投入してきた。しかも、バッテリー容量はサクラの1.5倍、電費も15%良いときている。航続距離は295km、実用距離を半分と考えても150km、長距離ドライブをしなければ十分な性能だ。価格に関しても、ギリギリ軽自動車として受け入れられる範囲に収まっている。2025年10月現在の全BEVラインナップの中では、最も魅力的に映る。もし私がBEVを購入するとしたらN-ONEe:になるだろうな。
日産サクラの反撃に期待!
ホンダ N-ONE e: の登場で大きく水をあけられた日産サクラだが、もちろんこのまま黙っているとは思えない。どこかで大幅な改良を入れてくることに期待したい。ただ、現在の経営状況が危うい日産にその体力があるのかは心配でならない。それと同時に中国のBYDが軽自動車規格のBEVを日本に投入してくる噂も出ているので、そこも注目だろう。
まとめ|健全なBEV競争がはじまることに期待
2025年の日本EV市場を俯瞰すると、すでに「航続距離競争」は限界点に達しているように思われる。今後求められるのは、より小さなバッテリーでどれだけ遠くまで走れるか、そして一般ユーザーが“手が届く価格”で提供できるかという、新たなフェーズに移らないといけないターニングポイントにいる。
国産EVでは、ホンダが軽EVの分野で新しい風を吹き込み、日産や三菱がその背を追う展開に期待。一方で、輸入車勢は依然として高級・大型路線を突き進んでおり、日本市場では「現実路線の国産BEV」が今後の主役になるだろうというのが私の予想。
N-ONE e: は、まともなEV競争の第一歩のように思える。これを皮切りに、より多様で実用的なBEVが登場し、“選ぶ楽しさ”が広がっていくことを期待したい。
あとがき

本当は充電規格に関しても言及したかったのだけど、勉強不足かつEVのラインナップのリストアップで力尽きたので、また別の機会で記事化したいと思う。EVは手を出すには色々と知らなきゃいけない事が多いのも、販売台数が増えない要因な気がする。
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