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S耐チャレンジとは何か?|入門と育成の狭間にある新カテゴリーを読み解く

コラム
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「S耐チャレンジ」とは何か。
公式には“スーパー耐久を追体験できる参加型レース”と説明されており、モータースポーツの裾野拡大を目的とした新しい耐久イベントとして位置づけられている。

勝敗よりも完走や挑戦を重視し、
市販車ベースのNゼロ規定車両を用い、
60分という比較的短時間の耐久レースを体験できる──
そのコンセプトだけを見ると、
これから耐久レースに挑戦したい人に向けた「入門カテゴリー」に思えるだろう。

しかし、実際のスポーツ規則や参加条件を細かく読み解いていくと、その印象は少しずつ変わっていく。
国内Aライセンスが必須であること。
一方で国際Cライセンス以上は原則参加できないこと。
Nゼロのワンメイク車両がメインという車両規定。

これらの要素が組み合わさることで、S耐チャレンジは「入門」と「育成」のどちらにも完全には当てはまらない、やや曖昧な立ち位置のカテゴリーになっているようにも見える。

本記事では、S耐チャレンジの制度やルールを整理しながら、
参加条件の実態、
入門カテゴリーとして感じる違和感、
そして今後どのような形に発展していく可能性があるのかについて読み解いていく。

「S耐への入口」としてS耐チャレンジを検討している人にとって、一度立ち止まって制度を理解するための材料となれば幸いである。

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結論|S耐チャレンジは過渡期のカテゴリー、完成形はまだ先にある

結論から述べると、S耐チャレンジは明確な完成形をまだ持たない、過渡期のカテゴリーである。

それは制度として未熟という意味ではなく、入門と育成、体験と競技、その両方を同時に担おうとしている段階にある、という意味での過渡期だ。

だからこそ、その制度設計や立ち位置を整理する意味がある。

S耐チャレンジには、スーパー耐久を強く意識した要素が数多く盛り込まれている。
耐久レース形式の進行、
チーム編成を前提とした参加条件、
ピット作業を必須とする独自ルール。
これらは単なる走行会ではなく、「耐久レースとは何か」を実体験させる設計になっている。

一方で、参加資格やライセンス要件、想定されている参加者層を整理していくと、
入門カテゴリーとしても、
育成カテゴリーとしても、
どちらか一方に明確に振り切れているとは言い難い側面が見えてくる。

なぜこのようなズレが生じているのか。
それは、S耐チャレンジが耐久レースへの入口を作ろうとする試みの途中段階にあるからだ。
既存のスプリントレース参加者、
Nゼロ・ワンメイク車両のオーナー、
将来的にスーパー耐久を目指す層。
そのすべてを一つの枠で受け止めようとした結果、立ち位置がやや曖昧になっている。

本記事では、S耐チャレンジの制度やルールを整理したうえで、
どこに「入門要素」があり、
どこに「育成要素」があり、
そしてなぜ違和感が生まれているのかを順に紐解いていく。

S耐チャレンジを「分かりにくいカテゴリー」として切り捨てるのではなく、
なぜそう見えるのかを理解すること
それが、この先を読み進めるための前提となる視点である。

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S耐チャレンジとは?|スーパー耐久を体験できる参加型耐久イベント

2026 Super Taikyu Challenge Sporting Regulationより引用
クリックすると規則書にジャンプ

S耐チャレンジとは、スーパー耐久未来機構(STMO)が主催する、耐久レース形式の参加型イベントである。
公式には「スーパー耐久を追体験できる場」と位置づけられており、これまで“観る側”だった人が、実際に“走る側”として耐久レースに関われる機会を提供することを目的としている。

STMOが掲げる最大のテーマは、モータースポーツの裾野拡大だ。
スーパー耐久という国内トップクラスの耐久レースは、多くのクルマ好きにとって憧れの存在である一方、参加へのハードルは高く、現実的な選択肢になりにくい。
S耐チャレンジは、その距離を少しでも縮めるための試みとして企画された。

特徴的なのは、勝敗や結果そのものよりも、「耐久レースという体験」を重視している点にある。
複数ドライバーによるチーム編成、
ピットクルーとの連携、
限られた時間の中での判断と役割分担。
そうした耐久レース特有の要素を、比較的コンパクトな60分レースの中で体験できるよう設計されている。

また、使用される車両は市販車ベースが前提で、Nゼロ規定や各ワンメイクレースの車両規定に準じたクラス構成となっている。
高額な改造や特別なマシンを用意しなくても参加できる点は、「まずは耐久を体験してみたい」という層を強く意識したものだと言えるだろう。

さらに、完走したすべてのチームに賞典が用意されている点も、S耐チャレンジを象徴する要素のひとつである。
ここでは、順位だけが価値基準ではない。
最後まで走り切ること、仲間と協力して一つのレースを成立させること自体が評価される。

STMOは、このS耐チャレンジを通じて、将来的にスーパー耐久へとステップアップしていく参加者が生まれることを期待している。
あくまで「ゴール」ではなく、耐久レースの世界に足を踏み入れるための“きっかけ”としての位置づけ。
それが、公式に語られているS耐チャレンジの基本的な役割である。

競技形式とレース内容|耐久レース形式走行会とは何か

S耐チャレンジは、制度上「耐久レース形式走行会」として位置づけられている。
この表現は一見すると分かりにくいが、S耐チャレンジの性格を理解するうえで重要なキーワードだ。

本イベントは、日本自動車連盟(JAF)の承認を受けた
練習模範走行行事として開催される。
これは、競技車両が同時に走行し、予選・決勝というレース形式を採りながらも、制度上は「公認レース」ではなく、安全管理と教育的要素を重視した走行会として整理されていることを意味する。

S耐チャレンジがこの形式を採用している理由は明確だ。
スーパー耐久の雰囲気や進行を可能な限り再現しつつ、参加者に過度なリスクや負担を求めないこと。そのために、競技性と管理性のバランスを取った枠組みとして「耐久レース形式走行会」という立ち位置が選ばれている。

レース構成も、その思想に沿ったものとなっている。
予選は30分間のタイムアタック形式で行われ、
2名のドライバーがそれぞれ走行し、その合算タイムによってスターティンググリッドが決定される。
個人の速さだけでなく、チームとしての安定感が問われる仕組みだ。

決勝は60分間のミニ耐久レース。
スプリントレースほど短くはなく、一方で本格的な長時間耐久ほどの負担もない。
ドライバー交代やピット作業を確実に経験できる、「耐久レース入門」として現実的な時間設定となっている。

また、競技全体を通して重視されているのは、単なる順位争いではなく、耐久レースの進め方そのものを体験することである。
時間管理、役割分担、ピットワーク、チーム内の連携。
こうした要素を、実戦形式の中で学ぶことが、S耐チャレンジの大きな狙いだ。

このようにS耐チャレンジは、レースと走行会の中間に位置する独自の競技形式を採ることで、スーパー耐久の世界観を“体験”として提供することを目的としている。
制度上の立ち位置は控えめでありながら、内容はあくまで耐久レースそのもの。
そのギャップこそが、このカテゴリーの特徴と言えるだろう。

出場できる車両|Nゼロ・ワンメイク車両が中心

S耐チャレンジに出場できる車両は、原則としてNゼロ規定、もしくはそれに準じたワンメイクレース車両が中心となっている。
市販車をベースとし、改造範囲を大きく制限した車両規定を採用することで、マシン性能差を抑え、参加のハードルを下げることが意図されている。

具体的には、
ロードスターのNR-A仕様、
ヤリスやヴィッツのワンメイクレース車両、
N-ONE OWNER’S CUP車両など、
すでに国内で実績のある入門〜育成カテゴリーの車両が想定されている。
いずれも、部品やセットアップの情報が広く共有されており、
初めて耐久レースに挑戦するチームでも比較的準備しやすい点が特徴だ。

この車両規定から読み取れるのは、
S耐チャレンジが「車両開発競争の場」ではなく、
耐久レースという競技そのものを体験する場として設計されているという点である。
エンジンや足回りに大きな差が出にくい環境を用意することで、
ドライバー交代、ペース管理、ピット作業といった耐久特有の要素に意識を向けやすくしている。

一方で、すべての車両が無条件で参加できるわけではない。
大幅な改造が施された車両や、性能差が大きくなりやすい仕様は対象外となり、規定から外れる車両については原則として参加が認められない。
例外的に、試験的・開発的な意味合いを持つ車両については、事前審査のうえで特定クラスとして参加が認められる場合もあるが、これはあくまで限定的な扱いである。

このように、S耐チャレンジの車両規定は、「誰でも持ち込みやすい車両」を軸にしつつ、耐久レース体験に必要な安全性と公平性を確保することを目的としている。
高額な専用マシンを用意する必要がなく、既存のワンメイク車両を活用できる点は、参加型イベントとしての性格を強く表していると言えるだろう。

参加条件|必要なライセンス・参加資格を整理

S耐チャレンジの参加条件は、耐久レース形式走行会という位置づけを踏まえ、ドライバーだけでなくチーム全体の体制まで含めて定められている。
ここでは、ライセンス要件とチーム編成の考え方を整理していく。

まず、ドライバーに関する条件として、
すべてのドライバーが国内Aライセンスを保持していることが必須とされている。
これは、日本自動車連盟(JAF)が発行する競技ライセンスの中でも、競技経験者を前提とした区分であり、耐久レースという競技形式を安全に成立させるための基準だと考えられる。

また、S耐チャレンジでは国際ライセンス保持者の参加は原則不可とされている。
上位カテゴリーの経験者が多数参加することを防ぎ、イベント全体のレベル感や雰囲気を一定の範囲に保つことが目的と読み取れる。
あくまで「体験型耐久イベント」としての性格を維持するための線引きと言えるだろう。

チーム編成については、ドライバー2名1組が基本となる。
単独走行ではなく、ドライバー交代を前提とした構成が義務付けられており、耐久レースならではの役割分担や連携を体験することが求められる。

加えて重要なのが、メカニック(ピットクルー)の存在である。
S耐チャレンジでは、チームごとに複数名のピットクルーを登録することが可能で、レース中のピット作業やサポートを担う体制が想定されている。
ここで求められているのは、プロフェッショナルな専属メカニックではなく、あくまでチームの一員として作業を分担できる人員だ。

実際のレースでは、
ピットイン時の作業、
タイヤローテーション、
車両の安全確認など、
メカニックの役割は少なくない。
S耐チャレンジは、ドライバーだけで完結するイベントではなく、チーム全体で耐久レースを成立させる体験を重視していることが、この参加条件からも読み取れる。

さらに、初参加者に対しては、ドライバー・ピットクルーを含めた事前ブリーフィングや講習の受講が義務付けられている。
耐久レース特有の進行や安全管理を、チーム全員で共有したうえで走行に臨むことが求められる。

このようにS耐チャレンジの参加条件は、
「速く走れるかどうか」だけではなく、
チームとして耐久レースに向き合えるかどうかを重視した設計となっている。
ドライバー、メカニック、サポートスタッフを含めた体制づくりそのものが、S耐チャレンジの参加条件の一部であると言えるだろう。

必要となる装備品|耐久レースに挑むための基本装備

S耐チャレンジは耐久レース形式走行会として開催されるため、必要となる装備は一般的な走行会よりも一段階シビアな基準で考える必要がある。
ドライバー個人の装備だけでなく、車両側の安全装備も含めて、「耐久レースを成立させる前提」の準備が求められる。

まず、ドライバー装備として必須となるのは、
ヘルメット、レーシングスーツ、グローブ、シューズといった基本装備である。
これらはFIA基準に準拠したものが強く推奨されており、競技参加を想定した装備選びが前提となる。

車両側についても、ロールケージ、バケットシート、4点式以上のシートベルトといった基本的な安全装備の装着が義務付けられている。
これらは単に規則を満たすための装備ではなく、ドライバー交代やピット作業を含む耐久レース特有の進行を安全に行うために不可欠な要素だ。

また、S耐チャレンジではピット作業がレース進行の一部として組み込まれているため、消火器や作業時の安全装備など、チーム全体で共有・準備すべき装備についても意識しておく必要がある。
耐久レースは「走る人」だけでなく、「支える人」を含めた装備と体制があって初めて成立する競技である。

もっとも、装備品については
「どこまでの規格が必要なのか」
「初心者は何を優先して揃えるべきか」
といった疑問を持つ人も多いだろう。
S耐チャレンジをきっかけに耐久レースへ踏み出す場合、装備選びは悩みやすいポイントのひとつでもある。

そこで本ブログでは、ヘルメット、スーツ、グローブ、HANSなどの装備品について、初心者向けに基準や選び方を整理した記事を別途用意している。
S耐チャレンジへの参加を検討している人は、以下の装備解説記事をあわせて確認してほしい。

S耐チャレンジは、装備を揃える過程そのものが
「耐久レースに向き合う準備期間」となるイベントでもある。
ルールを満たすだけでなく、自分たちのチームにとって無理のない装備構成を考えることが、安全で充実した耐久レース体験につながっていくだろう。

独自ルールの特徴|タイヤローテーション義務の意味

S耐チャレンジを特徴づけるルールのひとつが、
決勝レース中にタイヤローテーション作業を義務付けている点である。
これは一般的なスプリントレースや走行会ではあまり見られない、耐久レースならではの要素を強く意識したルールだ。

決勝中、各チームはピットインを行い、
2本以上のタイヤを組み替える作業を必ず実施しなければならない。
単なるドライバー交代だけでは成立せず、ピット作業そのものがレース進行の一部として組み込まれている。さらに、エア工具の使用は禁止されており、作業は人力で行うことが前提とされている。

このルールの狙いは明確で、ピット作業を「結果に直結するイベント」として体験させることにある。
耐久レースでは、走行中の速さだけでなく、ピットでの段取りや役割分担、作業の正確さがレース展開を大きく左右する。
S耐チャレンジでは、その要素をあえて省略せず、短時間のレースの中に凝縮して組み込んでいる。

また、タイヤローテーションが義務化されていることで、チーム内の連携や事前準備の重要性も浮き彫りになる。
誰がどの作業を担当するのか、どの順番で動くのか、作業時間をどう管理するのか。
こうした点を事前に詰めておかなければ、レース中に慌ただしくなるだけでなく、ペナルティやロスタイムにつながる可能性もある。

さらに、作業には最低滞在時間が設定されており、速さだけを競うような危険なピットワークを防ぐ工夫も盛り込まれている。
これは安全面への配慮であると同時に、「誰でも一定水準で耐久レースを体験できる」環境を整えるための仕組みでもある。

このタイヤローテーション義務は、S耐チャレンジが単なるミニ耐久レースではなく、耐久レースの進め方そのものを学ぶ場として設計されていることを象徴するルールだ。
走行時間だけを切り取れば短いレースであっても、ピット作業を含めることで、スーパー耐久に通じる一連の流れを体験できる構成となっている。

S耐チャレンジは、速さを競う場であると同時に、チームで耐久レースを成立させるための“実地訓練の場”でもある。
この独自ルールは、その思想を最も分かりやすく体現していると言えるだろう。

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S耐チャレンジに感じる違和感|入門要素と育成要素が両方中途半端

ここまでS耐チャレンジの概要、競技形式、車両規定、参加条件を整理してきた。
それらを俯瞰したとき、どうしても拭えないのが「入門としては重く、育成としては噛み合わない」という違和感である。

S耐チャレンジは、公式には「参加型」「体験型」の耐久イベントとして紹介されている。
しかし、制度を構成する要素を一つずつ見ていくと、その立ち位置がどこにあるのかは決して明確ではない。

違和感①|耐久レース形式走行会なのに国内Aライセンスが必要

まず最初に感じる違和感は、
競技形式が「走行会」であるにもかかわらず、国内Aライセンスが必須とされている点だ。

一般的な走行会や耐久走行会であれば、ライセンス不要で参加できるケースがほとんどだ。
「まずは走ってみる」「雰囲気を知る」といった入門段階の場として機能しているからだ。

一方、S耐チャレンジは
・JAF公認レースではない
・戦績として公式に残るわけでもない
という位置づけでありながら、参加者にはAライセンス相当の経験と準備を求めている。

これは、安全管理や運営上の理由として理解できる面もある。
しかし、「入門イベント」として捉えた場合のハードルは決して低くない
結果として、「耐久に興味はあるが、まだAライセンスまでは考えていない層」が最初から対象外となってしまう構図が生まれている。

違和感②|Nゼロ・ワンメイク車両の“主戦場”と参加資格が噛み合っていない

もうひとつの違和感は、
S耐チャレンジで想定されている車両と、その車両を実際に所有・運用している層の実態が噛み合っていない点にある。

S耐チャレンジで使用可能とされているNゼロ規定やワンメイクレース車両は、すでに国内各地でスプリントレースを主戦場として活躍しているカテゴリーだ。
ロードスター、ヤリス、N-ONEなど、これらの車両を所有している人たちは、「これからレースを始める人」だけではない。

実際には、
・ワンメイクレースを長く続けている経験者
・シリーズ参戦を重ねてきたベテランドライバー
・国際Cライセンスを保持しているドライバー
が一定数含まれている。
Nゼロ・ワンメイク車両は、すでに経験者が主戦場として使っている車両でもある。

しかしS耐チャレンジでは、
国際Cライセンス保持者は原則として参加不可とされている。
この条件によって、
Nゼロ・ワンメイク車両を所有しているベテラン層が制度的に排除される構図が生まれている。

一方で、同じ車両を持つビギナー層に目を向けると、彼らの多くは依然としてスプリントレースを主戦場としている。
経験を積む段階にあるビギナーにとって、耐久レースはまだ選択肢の外にあるケースも多い。

ここでさらに違和感が生じるのが、
ビギナー層がベテランドライバーとペアを組んで出場する道が用意されていない点だ。
耐久レースは本来、経験者と経験の浅いドライバーが同じチームで走ることで、ペース配分やレース運びを学べる競技でもある。

しかしS耐チャレンジの参加資格では、
・ベテラン層はライセンス要件で参加できない
・ビギナー層は単独、もしくは同レベル同士でしか組めない
という状態になっている。
結果として、
車両を持っているベテランも参加できず、
車両を持っているビギナーもスプリント側に留まる

という、耐久レースへの導線が途切れた構造が見えてくる。

まとめると、この違和感は次の三点に集約される。

  • Nゼロ・ワンメイク車両の保有者には、国際Cライセンス保持者を含むベテラン層が一定数存在する
  • そのベテラン層が、参加資格の制限によってS耐チャレンジに出場できない
  • ビギナー層が、ベテランドライバーとペアを組んで耐久を学ぶルートが用意されていない

S耐チャレンジは「耐久レース体験」を掲げている一方で、実際にその車両を使ってきた人たちのキャリアや分布を考えると、想定している参加者の層にやや歪みが生じているようにも見える。

この点は、制度が未成熟であるがゆえに生まれている部分でもあり、次章で触れる今後の展開次第では、解消されていく可能性を十分に残していると言えるだろう。

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今後の展開予想|FIRST S耐構想と公認レース化の可能性

S耐チャレンジ 開催発表 資料より抜粋

ここまで整理してきた違和感は、S耐チャレンジという取り組みそのものを否定するものではない。
むしろ、新しい耐久カテゴリーを立ち上げる初期段階だからこそ表面化している課題だと捉えることもできる。
では、この制度は今後どのような方向に進むことで、より分かりやすいステップとして成立していくのだろうか。

JAF承認の耐久レース形式走行会から、公認レースへの昇格

ひとつの可能性として考えられるのが、現在の「耐久レース形式走行会」という位置づけから、JAF公認耐久レースへの昇格である。

実績を重ね、
・運営ノウハウが蓄積され
・安全性が十分に担保され
・参加台数と需要が安定してきた段階で
公認レース化が実現すれば、制度の位置づけは一気に明確になる。

公認レースとなれば、
成績の扱い、
ライセンスとの関係、
シリーズとしての評価軸が整理され、
「走って終わり」ではなく、次につながる実績として意味を持つようになる。
S耐チャレンジが“体験イベント”から“競技カテゴリー”へ進化するための、ひとつの分岐点と言えるだろう。

年間シリーズ化によるステップアップルートの明確化

もうひとつ重要なのが、シリーズ戦としての整備である。
単発、もしくは年数戦のイベントではなく、年間を通したシリーズとして成立すれば、参加者はより明確な目的意識を持って挑戦できるようになる。

たとえば、
・年間4〜5戦規模のシリーズ化
・ポイント制の導入
・一定条件を満たしたチームへの次ステップ提示
といった仕組みが整えば、「1年戦えば、次が見える」カテゴリーとして認識されやすくなる。

S耐チャレンジが単なる“耐久を体験する場”から、S耐を目指す過程の一部として機能するためには、このシリーズ性は欠かせない要素だ。

入門要素の分離|FIRST S耐構想への期待

もうひとつ、非常に重要な鍵となるのが、入門要素の分離である。
すでに構想段階として示唆されている「FIRST S耐」は、この点を解消するための受け皿になり得る。

FIRST S耐が
・ライセンス不要
・より低コスト、簡素な体制
・「耐久を知る」ことに特化
したカテゴリーとして独立すれば、S耐チャレンジはその卒業先として位置づけやすくなる。

そうなれば、
・ビギナーはFIRST S耐で耐久の基礎を学び
・経験者はS耐チャレンジで本格的な耐久運営を体験し
・その先にスーパー耐久がある
という、一本の筋が通ったステップが見えてくる。

過渡期だからこそ、方向性が問われている

現時点のS耐チャレンジは、多くの要素を一つの枠に詰め込んだ結果、やや分かりにくい立ち位置になっている。
しかしそれは、制度が失敗しているというよりも、まだ完成形に至っていない過渡期にあることの表れだろう。

FIRST S耐との役割分担、公認化、シリーズ化。
これらが段階的に整理されていけば、S耐チャレンジは「耐久レースに本気で踏み出す人のためのカテゴリー」として、より明確な価値を持つ存在になるはずだ。

まとめ|S耐チャレンジはどんな人に向いているカテゴリーなのか

S耐チャレンジは、現時点では万人向けの入門カテゴリーとは言い切れない。
一方で、条件が合う人にとっては、他に代えがたい耐久レース体験の場でもある。
ここでは、これまで整理してきた内容を踏まえ、
どんな人に向いているのか、そして向いていないのかを整理しておきたい。

まず、S耐チャレンジが向いているのは、
すでに国内Aライセンスを取得し、スプリントレースや走行会の経験を積んできた人だ。
単独で走るレースには慣れてきたものの、耐久レース特有のチーム運営やピットワークは未経験、
あるいは経験が浅い。そうした段階にいる人にとって、S耐チャレンジは耐久レースの全体像を実戦形式で学べる貴重な場となる。

また、既存のNゼロ規定車両やワンメイク車両を保有しており、その車両を使って次の挑戦を考えているチームにも向いている。
高額な専用耐久マシンを用意せずとも、手持ちの車両で耐久に挑戦できる点は、参加型イベントとしての大きな魅力だ。

一方で、S耐チャレンジが向いていない、もしくは現時点では慎重に検討すべき層も明確に存在する。
たとえば、
「これからレースを始めたい」
「耐久レースをまずは気軽に体験してみたい」
という完全なビギナー層にとっては、ライセンス要件やチーム体制の準備が負担になる可能性が高い。

また、Nゼロ・ワンメイク車両を主戦場としてきたベテランドライバーの中には、制度上の参加条件によって、S耐チャレンジを選択肢に入れにくい人もいる。
現時点では、「経験を伝える側」として耐久に関われる仕組みが十分に整っているとは言い難い。

こうして見ると、S耐チャレンジは
すでに一定の経験を積んだ参加者が、耐久レースという競技に本格的に踏み出すための中間地点
として捉えるのが最も近い。
最初の一歩でもなければ、最終目標でもない。
あくまで、その途中に位置するカテゴリーである。

今後、FIRST S耐のような明確な入門カテゴリーが整備され、S耐チャレンジとの役割分担がはっきりすれば、この位置づけはさらに分かりやすくなるだろう。
現段階では、自分の経験値、目的、チーム体制を冷静に照らし合わせたうえで、「今の自分に合っているかどうか」を判断することが重要だ。

S耐チャレンジは、完成された制度ではない。
しかしだからこそ、耐久レースに本気で向き合おうとする人にとっては、大きな可能性を秘めたカテゴリーでもある。その現在地を正しく理解することが、次のステップを考える第一歩になるだろう。

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