最近はローカルカテゴリーのモータースポーツの現場でも電気機器を使用することが多くなった。スマートフォンは言わずもがな、データロガーを使った走行データの解析のためにノートPCを持ち込むのも当たり前になっており、冷暖房器具を持ち込む人もいるくらいだ。こうも電気機器が増えてくるとピットでは電源(コンセント)の争奪戦が始まる。もちろん譲り合って使うのがマナーというものだが、不便であることに変わりはない。
そこで欲しくなってくるのがポータブル電源だ。1台持っていれば快適にレースウィークを過ごせるようになる・・・かというとそうでもない。出力や容量によって様々なモデルがあるので、選択を間違えると使いたかった電気機器が使えないこともある。この記事ではポータブル電源の代表的なモデルごとに使用できる機器や充電できる回数、使用可能時間を整理していき、モータースポーツで使うならどのモデルのポータブル電源が最適かを考えていく。
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結論|バランス重視のJackery 1000 New もしくは軽量重視の Jackery 240 New
結論として、モータースポーツで幅広く使うなら Jackery 1000 New が最もバランスに優れている。もしくは、使用する電気機器が限られても問題ないならばJackery 240 Newでも十分と言えるだろう。その理由を順番に解説していく。
ポータブル電源に求められる2つの要素
電池切れの不安を解消する安心感

ポータブル電源に一番求められることは、充電機器のバッテリーが切れてしまうことの不安や心配を解消してくれることだ。実は最近の充電機器のバッテリーは非常に優秀で、1日使うだけならば事足りることがほとんどだ。とはいえ万が一にバッテリーが無くなってしまった時の不安や心配は拭いきれない。電動工具の使用を少し控えめにしようとか、ノートPCを使う時は画面の明るさを落とすなど、節電を意識して行動してしまう。当然、これらは作業効率を悪化させる原因となり、わずかながら競技でのパフォーマンスの低下につながる。筆者の経験上、こういった細かなストレスの解消は、じわりじわりとタイムアップにつながっていく。ポータブル電源の導入はピット作業での大きな安心につながる。
充電したい電気機器
- スマートフォン・タブレット
- カメラ機材
- 電動工具用バッテリー
- ノートPC
ピットでの快適性を支える電力

ポータブル電源に二番目に求められることは、ピットでの快適性の向上だ。具体的には、暑い夏なら扇風機を回して涼んだり、クーラーボックス(小型の冷蔵庫)で飲み物を冷やすなど、寒い冬なら電気毛布で温まったり、電気ケトルで温かい飲み物を作るなど、暑さや寒さへの対策に使うことだろう。ピットでどれだけリラックスして過ごせるかも競技パフォーマンスに直結する。ただし、冷暖房器具は電力消費も激しいため、ポータブル電源のモデルによっては使用できない、もしくは極短時間しか使えない場合がある。ではモデルごとにどんな電気機器までの使用に耐えられるのか見ていこうと思う。
使えると便利な電気機器
- 液晶テレビ(タイミングモニター表示)
- 扇風機・サーキュレーター
- 小型 冷蔵庫・クーラーボックス
- 電気毛布・ブランケット
- 湯沸かしポット・電気ケトル
- スポットクーラー
- 電気ストーブ
- 電気調理器具・ホットプレートなど
Jackeryラインナップ解説
Jackery 240 New|入門用・軽量モデル
電池切れの不安を解消する安心感 | 〇 |
ピットでの快適性を支える電力 | ✕ |
- 容量:256Wh
- 出力:300W
- 重量:3.6kg
スマートフォンやカメラ機材、ノートPCの充電に最適なモデル。電動工具用の大容量バッテリーも2回フル充電にできる容量を持っている。しかも重量が3.6kgと軽量コンパクトで持ち運びも苦にならない。電池切れの不安・心配の解消には必要十分な性能を持っている。ただし扇風機や小型の冷蔵庫などは約4時間ほどで電池切れを起こすのに加え、お湯を沸かすための一般的な電気ポットは使用できない点には注意が必要だ。
Jackery 500 New|中途半端になりやすいモデル
電池切れの不安を解消する安心感 | 〇 |
ピットでの快適性を支える電力 | △ |
- 容量:518Wh
- 出力:500W
- 重量:5.86kg
Jackery 240 Newに対して容量・出力共に大きいモデル。扇風機や小型冷蔵庫を8時間ほど使用することができ、昼間の時間帯は快適に過ごせるかもしれないが、他のものの充電にまわす余力はないので容量的には物足りなさを感じる。出力も上がっているが、一般的な電気ポットの使用はできず、アウトドア用や省エネタイプの電気ケトルでないと使えないため、使える電気機器に制限がある。中途半端に使える機器が増える分、不便さも増える可能性があるため、このモデルはおすすめできない。
Jackery 1000 New|万能型でバランス最強
電池切れの不安を解消する安心感 | 〇 |
ピットでの快適性を支える電力 | 〇 |
- 容量:約1070Wh
- 出力:定格1500W、瞬間3000W
- 重量:10.8kg
Jackery 500 Newに対して2倍の容量と3倍の出力を持つ万能モデル。扇風機もしくは小型冷蔵庫を一日使用しても、スマートフォン・電動工具バッテリー、ノートPCなどを充電する余力が十分に残る。モータースポーツで不自由なく使うにはこのモデル以上の容量と出力が欲しい。ただしホットプレートなどの電気調理器具は40分程度で容量を使い切ってしまうので注意が必要。重量は10.8kgと決して軽くはないが、1人で持ち運びするギリギリの重量感とは言えそうだ。モータースポーツで使うならばトータルバランス的にJackery 1000 Newが最もおすすめできる。
Jackery 2000 New|発電機と競合する
電池切れの不安を解消する安心感 | 〇 |
ピットでの快適性を支える電力 | 〇 |
- 容量:約2042Wh
- 出力:定格2200W、瞬間4400W
- 重量:17.9kg
Jackery 1000 Newに対してさらに容量と出力を向上させたモデル。ホットプレートなどの電気調理器具で簡単な料理をしたとしても、他に使える電力も十分に残る。ただしスポットクーラーや電気ストーブはこのモデルでも2~3時間とごく短時間しか使えないので注意が必要だ。重量も17.9kgと重量級のため、持ち運びには台車が欲しくなるレベルだ。筆者の見解としては、このモデルを購入するのであれば、思い切って発電機を購入した方が万能で使い勝手がよく安価である。よく考えてから購入を決めてもらいたい。
使用目安一覧表で比較する
機器 | 240New | 500New | 1000New | 2000New |
---|---|---|---|---|
スマートフォン 充電回数 | 約12回 | 約26回 | 約53回 | 約106回 |
電動工具バッテリー (18V/6Ah) 充電回数 | 約2回 | 約4回 | 約8回 | 約17回 |
ノートPC 15~16型 使用時間 | 約7h | 約14h | 約27h | 約55h |
液晶TV 24〜32型 使用時間 | 約4h | 約8h | 約16h | 約32h |
扇風機・サーキュレーター 使用時間 | 約4.5h | 約9h | 約18h | 約36h |
小型 車載冷蔵庫 使用時間 | 約4h | 約8h | 約16h | 約32h |
電気毛布・ブランケット 使用時間 | 約4h | 約8h | 約16h | 約32h |
アウトドア用 電気ケトル 使用回数 | 1〜2回 | 3〜5回 | 6〜10回 | 13〜21回 |
家庭用 電気ケトル 使用回数 | ✖ 不可 | ✖ 不可 | 約9回 | 約16回 |
スポットクーラー | ✖ 不可 | 約1h | 約2h | 約4h |
電気ストーブ 使用時間 | ✖ 不可 | ✖ 不可 | 約1h | 約2h |
ホットプレート 使用時間 | ✖ 不可 | ✖ 不可 | 約40〜45分 | 約1.5h |
まとめ|ポータブル電源は安心のために買うもの
ローカルカテゴリーのモータースポーツの現場でも、快適さと作業効率を高めるために電気機器の存在は欠かせなくなっている。それらをストレスなく使用するためにポータブル電源の存在は今後欠かせなくなってくるだろう。ただし、すべての電気機器をストレスなく長時間稼働できるポータブル電源は現状存在しないため、使う機器や環境によって最適なモデルは変わってくる。
電動工具用のバッテリーやノートPCなどの充電だけならばJackery 240 Newで十分に電池切れの心配や不安を解消してくれる。もし、より快適なピット環境を求めるならばJackery 1000 Newが最適解となるだろう。

実は筆者自身はJackery 240 Newを持っていて、車中泊などをする時に使っている。ちなみに電気ケトルでお湯が沸かせないこと以外に不満点はない。正直、お湯も沸かしたいと思うことはほとんどないので、不満はほとんどないに等しい。なによりも、充電機器のバッテリー切れの不安から解放されて、旅行やレジャーを全力で楽しめるのが、何よりも買って良かったと思ったことだ。
もし漠然とポータブル電源が欲しいけど、どれを買ったらいいのかわからないのであれば、とりあえずJackery 240 Newを購入するのはアリかもしれない。きっとその漠然とした不安を拭ってくれるだろう。
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