モータースポーツを始めようと考えたとき、最初に迷うのが「何を着ればいいのか」である。服装は安全性だけでなく、参加できるイベントやカテゴリーの範囲にも直結する要素だ。特にレーシングスーツは、耐火性能や規格によって使える競技が変わるため、購入前に自分の目的を明確にしておくことが大切である。この記事では、初心者でも迷わず選べるように、カテゴリー別に「必須」と「推奨」の服装を整理し、おすすめモデルも紹介する。
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結論|モータースポーツの服装は段階的にそろえよう
モータースポーツで使用する服装は、大きく4つの段階に分けられる。最も基本となるのが長袖・長ズボンや作業ツナギで、入門イベントであればこれで十分だ。
次に、レーシングカートで使用される非耐火スーツ(カートスーツ)があり、動きやすさと摩耗耐性を兼ね備えている。
さらに、耐火性能を持つFIA未公認スーツは、草イベントやBライセンス競技で安全性を高めたい人に適している。
そして、公式戦で義務づけられるのがFIA公認スーツである。特にサーキットレースやドリフト(D1)では着用が必須であり、軽量かつ高い耐火性能を備えたモデルが選ばれている。
それ以外のカテゴリーでは、長袖・長ズボンもしくはFIA未公認スーツで参加可能であり、予算や安全性に応じて段階的に装備を整えていくのが現実的である。
一覧(カテゴリー別の服装区分)
| カテゴリー | 必須 | 推奨 |
|---|---|---|
| レンタルカート | 長袖・長ズボン | ― |
| レーシングカート | 非耐火スーツ(カートスーツ) | ― |
| ミニサーキット | 長袖・長ズボン | FIA未公認スーツ(耐火) |
| サーキット走行会 | 長袖・長ズボン | FIA公認スーツ |
| オートテスト | 長袖・長ズボン | ― |
| アベレージラリー | 長袖・長ズボン | ― |
| ドリフトテスト(草イベント) | 長袖・長ズボン | ― |
| ドリフト(D1) | FIA公認スーツ | ― |
| ジムカーナ/ダートトライアル | 長袖・長ズボン | FIA未公認スーツ(耐火) |
| ラリー(スペシャルステージ) | FIA未公認スーツ(耐火) | FIA公認スーツ |
| サーキットトライアル | FIA未公認スーツ(耐火) | FIA公認スーツ |
| サーキットレース | FIA公認スーツ | ― |
※主催者によって例外あり。参加前に特別規則書を必ず確認すること。
レーシングスーツの役割
レーシングスーツの役割は、単なるユニフォームではなく「命を守る装備」である。特に四輪モータースポーツでは、衝突や火災のリスクが常に存在する。筆者が知る限り、レーシングスーツに求められる安全性能は大きく分けて次の2つである。
耐火炎性能(難燃と耐熱)
万が一、車両火災が発生した際に、運転席から脱出するまでの間、炎からドライバーを守る性能を持たせている。FIA公認の規格によれば、炎にさらされても約10秒間はスーツ自体が燃えず、内部温度も火傷しないレベルに抑えられる。ただし注意が必要なのは、レーシングスーツは不燃ではなく難燃であり、10秒を超えると燃える場合があるという点である。スーツの素材にはNomex(ノーメックス)などの難燃素材が使用され、熱の伝達を抑えることでドライバーの命を守っている。
救出性能(肩バンド)
クラッシュでドライバーが気を失った場合や脱出困難な状態になった場合に備え、救出班がスーツをつかんで車外に引っ張り出せるよう、肩部には専用のバンドが設けられている。FIA公認規格ではこのバンドに375N(約38kgf)以上の引っ張り強度が定められており、縫製にも一定の強度基準がある。そのため、レーシングスーツのどの部分をつかんでも破れにくく、救助活動が迅速に行えるよう設計されている。
これらの安全性能に加え、レーシングスーツには通気性や軽量性も求められている。炎天下の走行でも快適性を保つことができるモデルも多く、さらにスーツのカラーやデザインにはチームアイデンティティという側面もある。公式競技ではスポンサーロゴの貼り付けが求められることもあり、機能と見た目の両立が重要な装備である。
カテゴリー別のおすすめ商品紹介
レンタルカート・オートテスト・アベレージラリー・ドリフトテスト
基本は長袖・長ズボンでOK。作業ツナギでも問題ない。
おすすめモデル:綿ツナギ
ジムカーナ・ダートトライアル・ミニサーキット
これらのカテゴリーでは、未公認レーシングスーツの着用を推奨する。耐火性能を備えたモデルを選べば安全性が大きく向上する。
おすすめモデル:スパルコ(Sparco)/ONE
ラリー・サーキットトライアル
未公認レーシングスーツが必須であり、できればFIA公認スーツを選ぶと安心である。火災時や救出時の安全性を確保できるため、装備の優先度は高い。
おすすめモデル:スパルコ(Sparco)/SPRINT
サーキットレース・D1グランプリ
FIA公認レーシングスーツが必須。最新のFIA 8856-2018規格に対応したモデルを選ぶことが望ましい。
おすすめモデル:スパルコ(Sparco)/COMPETITION
まとめ|正しい装備選びが、モータースポーツを楽しむ第一歩
モータースポーツの服装選びは、自分が参加するカテゴリーと安全性のバランスをどう取るかで決まる。入門レベルのイベントであれば長袖・長ズボンで十分だが、走行スピードや火災のリスクが高くなるにつれ、耐火スーツへのステップアップを検討すべきである。
草イベントやBライセンス競技ではFIA未公認スーツが安全面で有利であり、将来的にサーキットレースやD1などの公式戦を目指すなら、最初からFIA公認スーツを選んでおくと無駄がない。
装備を整えることは、自分自身だけでなく周囲の仲間を守る行為でもある。安全を意識し、段階的に装備を充実させていくことが、モータースポーツを長く楽しむための基本となる。

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