「そろそろ本格的にレースに挑戦したい」 「いつかは自分のレーシングカーを持ちたい」
そんな想いを抱き始めたあなたへ。 レンタルカートや走行会で経験を積んできた初心者、あるいはすでにサーキットライセンスを取得しステップアップを目指す中級者なら、本格的なレーシングカーの購入は次の大きな一歩だろう。
ただし、レーシングカーを買うことは普通の車購入とはまったく違う世界となる。今回は「レーシングカーの買い方」「チームに加入するのか個人でエントリーするのかの選択」「保管場所とトランポ事情」まで、これまで私が体験してきたこと、先輩方から教わったことも交えて詳しく紹介する。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
レーシングカーの買い方|新車か中古車か、初心者におすすめの選択肢
まず押さえておきたいのが、「レーシングカー購入」は大きく新車と中古車に分かれるということ。それぞれの特徴とメリット・デメリットを知っておこう。
新車の場合|理想の一台を作り上げる楽しみ
新車購入は、特にハコ車(ツーリングカー系)とフォーミュラカーで事情が異なる。
ハコ車(ツーリングカー)
ハコ車は市販車をベースにJAF規定に沿った改造を施していく。この「改造」こそが最大のハードルである。溶接作業やロールケージの取り付け、フルバケットシート、消火器の設置など、専門知識と設備が求められるため、レーシングチームや専門ガレージに一括で依頼するのが一般的だ。
新車改造費用の目安は、市販車両代+改造費で400〜1,000万円程度。例えば、ヤリスやロードスターのワンメイクレースなら約400万円~、86/BRZレース仕様なら約600万円〜、スーパー耐久仕様なら車両代含めて1,000万円を超えてくるだろう。
フォーミュラカー
フォーミュラカー(FIA-F4やスーパーFJなど)は、基本的に完成状態でデリバリーされる。個人購入も可能だが、組立後のセットアップやレースへのエントリーを考えると、やはり実績あるチームやショップを仲介した方が安心だ。
FIA-F4新車価格は約1,500万円。スーパーFJなら約500万円が目安だ。
中古車の場合|掘り出し物を探す楽しみ
レーシングカーの中古車市場は狭いが、予算を抑えて手に入れられる現実的な選択肢だ。
価格相場
- スーパーFJ:200〜400万円
- ロードスターワンメイクレース仕様:200〜300万円
探し方
中古車は個人売買が多く、ネット上の情報は少ない。私もFJを探していた時、最初はインターネットを頼ったが全く見つからず、結局知人のメカニックの紹介で候補車に出会えた。粘り強く情報収集し、場合によってはパドックで直接聞き込みするくらいの覚悟が必要だ。
チーム仲介のメリット
個人購入は安上がりだが、車両の素性が不明な場合も多い。チームやガレージを通すと、納車前に最低限のメンテナンスをしてもらえ、万が一のトラブルにも対応してくれる。手数料は10〜20万円+部品代ほどだが、初心者には特に心強い。
チーム加入 vs 個人エントリー|あなたはどちら向き?
車両を手に入れた後は「運用」を考えなければならない。大きく分けてチーム加入と個人エントリーがある。
チーム加入|安心とサポートのフルパッケージ
チーム加入の最大の利点は、メンテナンス、トランポ(積載車による運搬)、レース当日のサポートまで一括で任せられること。特に初心者は、トラブルや予想外の事態が多いため、頼れるチームの存在が大きな安心感につながる。
チーム選びのポイント
- エントリーリストをチェック:メンテナンスガレージ名が書かれている
- パドックでの情報収集:実際にレースを観戦し、現場の雰囲気を体験する
- ドライバーの層を見る:年齢層や所有車両からチームの雰囲気や費用感を把握
私は知人の紹介でとあるレーシングチームに出入りするようになったのがきっかけだったが、今でも「あの出会いがなければレース人生は違っていた」と思っている。
個人エントリー|自由度は高いが全て自己責任
個人エントリーは、車両の運搬からメンテナンス、レース当日のピット作業まで全てを自分で行うスタイルとなる。自由度は高いが、トランポの維持費(中古積載車で200〜500万円+維持費)、メンテナンス設備、メカ知識が必須となる。個人エントリーの場合は自走でサーキットに移動ができるナンバー付きレースまでとするのが現実的だ。
保管場所とトランポ事情|レーシングカーはどこに置く?
ナンバー無し車両は公道を走れないため、保管と運搬がセットで課題となる。
チームで保管
最も一般的な方法がこれだ。車両はチームのガレージで管理され、必要に応じてトランポでサーキットまで運搬してもらえる。メンテナンスも一括依頼できるため、初心者にとっては非常に楽である。
貸ガレージで保管
サーキット周辺には月額1.5〜2万円ほどで借りられる貸ガレージが多数存在する。メンテナンスや運搬は自分で行う必要があるが、コストを抑えたい場合には選択肢となる。
自宅で保管
大型の屋根付きガレージがあれば自宅保管も可能。ただし、スペース確保や近隣への騒音配慮が必要だ。個人で全てを賄える環境が整っていないと現実的ではない。
番外編|サーキット周辺ショップ
筑波サーキットのように、ゲート前にメンテナンスショップが集まる場所もある。この場合、エンジンをかけずに手押しで車両をサーキット内へ移動できるため、運搬費用を削減できる。これは大きな節約になる。私はコレを活用していた。
メンテナンス体制の選び方|フル依頼からDIYまで
保管と同様に重要なのがメンテナンス体制である。
全てチームに任せる
メカニック知識がない場合はチームにフル依頼するのが安心だが、当然費用は高額になる。年間契約で割安になる場合もある。
全て自分でメンテナンス
知識があるならDIYも可能。工賃が不要で安上がりだが、時間的コストが大きい。作業ミスはレース中のリタイアにも直結する。
ハイブリッド型
オイル交換など簡単な作業は自分で行い、難易度の高い作業だけプロに任せる方法。ドライビングに集中しつつ、費用も抑えられる。
筆者もかつてはハイブリッド型でメンテナンスを行い、徐々にできることを増やしていった経験がある。クルマを触る時間もモータースポーツの醍醐味といえるだろう。
まとめ|レーシングカーを手に入れてレース人生を加速させよう
レーシングカーの購入は、モータースポーツ人生における大きな節目である。 最初は不安もあるだろうが、信頼できるチームや仲間とつながることで、その一歩は必ず世界を広げてくれる。
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