FIA公認のソックス(耐火性くつ下)とは?
アンダーソックスとは、モータースポーツ競技中に着用する耐火性のある専用ソックスのことを指す。FIA(国際自動車連盟)が定めた安全基準を満たす装備であり、「FIA8856-2018」などの認証ラベルが縫い付けられているのが特徴である。
これらのソックスは、ドライバーが耐火装備一式を着用することを義務付けられるスピード系競技──たとえば、サーキットレースやラリー競技など──において着用が必須とされている。なお、ジムカーナやカート競技では義務化されていないケースもあるため、競技規則を事前に確認する必要がある。
なぜ専用のソックスが必要なのか?
一般的なコットン製の靴下や市販のスポーツソックスでは、火災時の延焼リスクが高く、モータースポーツ競技では安全基準を満たさない。FIA公認のアンダーソックスは、難燃素材(ノーメックスなど。消防服にも使用される高耐熱繊維)で作られており、高温下でも皮膚へのダメージを最小限に抑えることができる。
また、シューズとの相性や足の動きを妨げない構造も重視されており、長時間の着用でも快適さを保てる工夫がなされている。
さらに、レーシングスーツとシューズの間には構造上どうしても隙間が生じるため、その露出部を保護する目的でもアンダーソックスの着用が求められている。実際には、アンダーシャツやアンダーパンツよりも着用の優先度が高く、安全装備として非常に重要な位置づけとなっている。
アンダーソックスの役割
アンダーソックスの役割は、大きく以下の3点に分類される。
耐火・耐熱性
万が一の車両火災時に、足首や甲、かかとといった露出しやすい部位を保護する。
通気性と快適性の確保
レース中の発汗によるムレを軽減し、靴の中の環境を整えることで集中力を保つ。
シューズとのフィット感の向上
ソックスが適切にフィットしていることで、シューズのズレや足裏の痛みを防ぐ。
使用上の注意点
FIA公認のアンダーソックスを使用する際には、以下の点に注意したい。
重ね履きはNG
安全規定上、FIA非公認の靴下を下に履くことは禁止されている。必ず公認ソックス単体で着用すること。
洗濯は規定に従う
洗濯機の使用は可能だが、必ずネットに入れて優しく洗うこと。柔軟剤や漂白剤の使用は不可。乾燥機は避け、陰干しを徹底すること。
着用は常に両足に
レース中はもちろん、公式練習や車検がある場面では、左右ともに公認ソックスの着用が必要である。
折り返さず、ふくらはぎまでしっかり伸ばして着用する
ソックスを折り返して着用すると、裾のすき間からスーツの外へはみ出すおそれがある。これにより肌が露出する恐れがあるため、必ずふくらはぎまでしっかりと伸ばして履くことが求められる。
使用期間と劣化の確認を忘れずに
使用を重ねると生地の伸びや認証ラベルの消耗が起こる。耐火性能は永久ではないため、2〜3年を目安に買い替えを検討したい。
ソックス選びのポイント
アンダーソックスを選ぶ際は、以下のポイントを意識するとよい。
- FIA公認マーク付き(8856-2018規格)
- サイズ感がちょうどよく、ずれにくい設計
- 薄手か厚手かは使用シーンで選ぶ
- 耐久性と通気性のバランス
価格は1足5,000円〜8,000円程度が目安で、レース用品店やECサイトで購入可能である。
アンダーソックスは「安全の基本」
アンダーソックスは見た目に目立たず、装備の中では軽視されがちだが、その役割は極めて重要である。火災発生時のリスクを少しでも減らすため、そして足元の快適性を保つためにも、必ずFIA公認品を着用しよう。
モータースポーツは楽しみながら安全を守る競技。アンダーソックスは、その安全を支える“足元の縁の下の力持ち”と言える装備である。あなたの足元は、本当に守られているだろうか?
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