モータースポーツにおいて、**ヘルメットやシートベルト以上に“命を左右する装備”**があるとしたら、それがHANS(ハンス)である。
クラッシュ時、人間の首には想像以上の負荷がかかる。ハンドルやダッシュボードに頭を打つ前に、首が限界を超えて引き伸ばされる──このメカニズムこそが、重大事故の原因となってきた。
そのリスクを根本から減らすために開発され、現在ではF1やWRCはもちろん、国内アマチュアレースでも着用が“当たり前”になりつつある装備がHANSである。
しかし一方で、
- 本当に自分のレベルで必要なのか
- どんな競技から着用義務が発生するのか
- 何を満たせば「合法」なのか
こうした疑問を持ったまま、なんとなく後回しにしている人も少なくないだろう。
本記事では、HANSの仕組み・必要性・義務化の背景・具体的な着用条件を、これから競技に挑戦する人の視点でわかりやすく整理する。
「まだ大丈夫」では済まされない理由を、ここで一度きちんと確認してほしい。
目次(クリックでジャンプ)
HANS(ハンス)とは?
HANSとは「Head and Neck Support(頭部・頸部保護装置)」の略称であり、クラッシュ時に首へ集中する致命的な負荷を逃がすための安全装備である。
最大の役割は、衝突の瞬間に起きる「頭だけが前に振り出される動き」を抑制すること。
これにより、むち打ち・頸椎損傷・頭部外傷といった致命傷のリスクを大幅に低減する。。
現在では
- F1
- WRC
といった世界最高峰カテゴリーで完全義務化されており、
国内でも**JAF公認レースの出場条件**として指定されるケースが一般化している。
「プロだけの装備」だった時代は、すでに終わっている。
▶用語解説:「FIA公認装備品とは?」
HANSの構造と素材
HANS本体はU字型のカーボンパーツで構成されており、軽量かつ剛性が高い点が最大の特徴である。肩の上に乗せて使用するため、視界や操作性を損なわず、長時間の走行でもドライバーの負担になりにくい。
装着時は以下の流れで固定される。
- ヘルメットとHANSをテザーで接続
- その上から5点式または6点式シートベルトで身体を固定
こうした構造により、頭部の動きを適切に制限しながら、操作に必要な自由度は確保される設計となっている。
義務化された背景と実績
HANSの重要性が認識されるようになったのは、2000年代初頭に発生した重大事故がきっかけである。当時、クラッシュによる頸椎損傷・頭部外傷で命を落とすケースが相次ぎ、FIAは原因の多くがHANS未装着に起因することを指摘した。
その対策として、2003年からF1を皮切りに主要国際競技でHANSの着用が義務化。国内でも同様にJAFがHANSの使用を強く推奨し、現在ではFIA公認モデルの着用がレース出場条件となるケースが一般化している。
実際にHANSが導入されてからは、頸部損傷や死亡事故が大幅に減少しており、HANSが命を救う装備であることが明確に示されている。
具体的な規則と着用条件
HANSの着用はFIA基準8858に基づいて規定され、国際レースおよび多くの国内競技で以下の条件が求められる。
主な着用条件
- FIA公認のヘルメット(FIA 8860、8858、8859)との組み合わせが必須
- FIAテクニカルリストNo.29に掲載されたテザーシステムを使用すること
- 装着時、パッドの厚さは15mm以下、耐火素材で覆われていること
- HANS本体の角度は水平から60°を超えてはならない
- シートベルトは5点式以上のものが必要である
安全性を確保するため、これらの基準に従った正しい装着が求められる。
アマチュアレースでも広がるHANSの普及
HANSはかつてプロドライバー向けの高価な装備というイメージが強かったが、現在では草レース、ジムカーナ、ダートトライアルなどでも着用が推奨されている。
特にスピード域の高い競技に挑戦するなら、HANSの装着は自身の身を守る最優先事項だといえる。
まとめ|HANSはドライバーの命を守る必須装備
HANSは、クラッシュ時に最も損傷しやすい首・頭部を確実に守るための重要な装備である。カーボン素材やFIA基準による高い安全性が確立されており、多くの事故から命を救ってきた実績もある。
これからレースに挑戦する人は、必ずHANSの導入を検討してほしい。




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