四輪モータースポーツ用ヘルメットの選び方|規格の違いと競技別おすすめモデル

ヘルメット

モータースポーツを始めるとき、最初に直面する悩みのひとつが「どのヘルメットを買えばいいのか」という点だ。カテゴリーごとに必要な規格が異なるため、誤った規格を選んでしまうと競技に参加できないことがある。また、ヘルメットは大事な頭部を守る命綱であるだけに、安価すぎる製品を選ぶことに不安を感じる人も多いだろう。この記事では、カテゴリーごとに求められる規定を整理し、初心者でも迷わず選べるおすすめヘルメットを紹介する。安全性と規則の両面から最適な選択肢を見つけてもらいたい。

ちゃっくです。X(旧Twitter)YouTubeInstagramもやってます。【お問い合わせ自己紹介半生振り返り

この記事の目次(クリックでジャンプ)

結論|参加する競技に合わせて最適なヘルメットを選ぶ

モータースポーツで使用できるヘルメットの規格はカテゴリーによって異なる。規則書を確認すれば調べられるものの、カテゴリーごとに分かれているため初心者には理解しづらい。要点をまとめると以下のとおりだ。

つまり、「どのカテゴリーに参加するか」が選択基準となる。今の目的に合った規格を選び、将来のステップアップも視野に入れて準備しておくことが重要である。

カテゴリーヘルメット
バイク用
SG規格
ヘルメット
バイク用
JIS規格
ヘルメット
SNELL
SA規格
ヘルメット
四輪用
FIA規格
HANS
FIA規格
レンタルカート
レーシングカート
広場トレーニング任意
ミニサーキット走行会任意
サーキット走行会任意
オートテスト
ラリー(アベレージラリー)
ドリフトテスト
ドリフト(D1)
ジムカーナ任意
ダートトライアル任意
ラリー(SSラリー)任意
サーキットトライアル任意
サーキットレース

◎:着用義務、〇:着用可、✕:着用不可

ヘルメットの規格の説明

SG規格

SG規格は、日本国内で流通するヘルメットの安全基準で、製品安全協会が定めている。SGマークが付いたヘルメットは、衝撃吸収性能や貫通試験、あごひも強度、視界確保など複数の試験をクリアしており、公道走行に必要な安全性を満たしている。対象は通勤・通学や日常利用のライダーで、初心者からベテランまで安心して使える。SNELLやFIA規格に比べると基準はやや緩やかだが、速度域の低いレンタルカートや広場トレーニングでの着用であれば十分な安全性能を備えている。

JIS規格(JIS T8133:2015 2種)

JIS規格は「日本産業規格」に基づくヘルメットの安全基準で、バイク用ではJIS T8133が該当する。衝撃吸収性能や貫通試験、あごひも強度、視界試験など厳格な検査をクリアする必要があり、公道走行だけでなくJAF公認競技の一部でも使用が認められる高い安全性を持つ。規格は1種と2種に分かれ、一般的な二輪用ヘルメットは2種に分類されることが多い。SG規格より厳しいため、Bライセンス競技の参加者にも適した選択肢である。

SNELL SA規格

SNELL SA規格は、スネル記念財団が定める自動車競技専用のヘルメット安全基準である。火災を想定した難燃性素材や、ロールケージなど硬い対象物との衝突に耐える衝撃吸収性能、高強度のシールドなど四輪競技特有の要件を満たしている。発行年ごとに「SA2020」など更新され、最新モデルが推奨される。JIS規格同等として扱われるため、国内Bライセンス競技でも使用可能。国内Aライセンスが必要となるレース競技に関してはSNELL SA規格のみ認可を受けたヘルメットでは出場できないので注意が必要だ。

FIA規格

FIA規格は、国際自動車連盟が定める四輪モータースポーツ最高水準のヘルメット安全基準である。耐衝撃性・耐火性・貫通抵抗性など厳格な試験をクリアし、HANS対応も必須。主な規格には幅広い競技で使える8859-2015、F1やWECで義務化される8860-2018、飛来物対策を強化した8860-2018 ABPがある。国内外の公式競技で使用が求められ、本格的にレースへ挑戦するドライバーに欠かせない。

HANSの規格

HANS(Head and Neck Support)は、四輪モータースポーツでドライバーの首や頭部を守る安全デバイスで、事故時の前方衝撃から頸椎損傷を防ぐ役割を持つ。FIAが定める規格に基づき認証され、現在はFIA 8858-2010が主流である。衝撃試験や耐久試験、ヘルメットとの互換性試験をクリアした製品のみが使用可能で、JAFを含むFIA公認レース競技では装着が義務化されている。生命を守る必須の安全装備である。

おすすめヘルメット紹介

レンタルカート|リード工業 CROSS CR-715(SG規格・コスパ重視)

レンタルカートはカート施設側で安全基準を満たしたヘルメットを貸し出してくれるので、自分で購入する必要はない。ただし混雑時などは貸し出し用のヘルメットが足りなくなったり、自分にフィットするサイズが他の人に使われたりする。それら不測の事態に対応するために、自分専用のヘルメットを購入しておくのは賢い選択である。おすすめは国産メーカー製で、SG規格に適合したヘルメットである。

レーシングカート|OGK SHUMA(JIS規格・軽量で快適)

レーシングカートでは、JIS規格以上のフルフェイスヘルメットの着用が必須となる。四輪用ヘルメットの使用も認められているが、軽量化を求めてあえてバイク用ヘルメットを使う人も少なくない。おすすめは国産メーカー製で、JIS規格に適合したヘルメットである。

広場トレーニング|リード工業 CROSS CR-715(SG規格・入門用)

広場トレーニングはイベントによってはヘルメット不要と謳っているものもあるが、イベントの雰囲気や走行するコースによっては、不要と言われていても着用したくなるときがある。高額なヘルメットは必要ないので、SG規格に適合しているフルフェイスヘルメットを1個備えておくことをおすすめする。

ミニサーキット走行会|OGK SHUMA(JIS規格・サーキットデビュー用)

ミニサーキットなどの走行会では、ヘルメットを着用していれば参加できる場合がほとんどだが、速度域が上がると同時に、コース上に複数台が混走するため接触事故の危険性が一気に高まる。SG規格のヘルメットで参加しても問題はないが、筆者のおすすめとしてはJIS規格以上に適合したヘルメットである。

サーキット走行会|アライ GP-5W(FIA規格対応・HANS推奨)

フルサーキットを使用した走行会も、ヘルメットを着用していれば参加できる場合がほとんどだ。しかしミニサーキットに比べると速度域が上がり、コースや参加車両によっては時速180km以上に達することもある。この速度になると、5点式以上のシートベルトやHANSが欲しくなる。とはいえ、いきなりすべての装備を揃えるのは高額となるため、徐々に安全装備を整えていけるように、最初からFIA規格に適合したヘルメットを選んでおくのがおすすめだ。

オートテスト & アベレージラリー|不要(装備品不要で参加可能)

オートテストやアベレージラリーでは、ヘルメットを含む装備品の着用は不要だ。「着用しなくてもいい」ではなく「不要」と明記されている。ヘルメットは頭部を保護してくれる反面、視界を一気に狭めてしまう。リバースギヤを使った車庫入れを含むオートテストや、一般道を走るアベレージラリーでは、視界の狭さがかえって危険となるため着用不要となっている。その代わりに、ドライビングポジションや3点式シートベルトを正しく着用することで、安全性を高める必要がある。

ドリフトテスト|リード工業 CROSS CR-715(練習用におすすめ)

ドリフトテストはオートテストと違い、スライドコントロールが求められるため、危険度の違いからヘルメット着用が義務化されている。耳を覆うタイプのヘルメットでも参加は可能だが、筆者のおすすめは、ドリフトテスト以降のステップアップを見据えて、SG規格以上のフルフェイス型ヘルメットを用意しておくことだ。

ドリフト(D1)|アライ GP-6S(FIA規格必須。HANS必須)

ドリフト競技は現状D1のみのため、ここではD1のレギュレーションを紹介する。D1の規則書では、FIA規格に適合したヘルメットとHANSの着用が義務化されている。将来的にD1への出場を考えてドリフト練習を行う人は、あらかじめFIA規格のヘルメットとHANSを段階的に揃えていくことをおすすめする。

ジムカーナ & ダートトライアル|アライ GP-5W(FIA規格推奨)

ジムカーナとダートトライアルでは、JIS規格以上に適合したヘルメットの着用が必須となる。HANSに関しては任意装着であり義務ではない。しかし、最初からジムカーナやダートトライアル競技に出場することを目標としているならば、多少高額になってもFIA規格に適合したヘルメットを最初に購入することを筆者はおすすめする。なぜなら、安全装備のグレードアップは後回しにしてしまう傾向があるからだ。JIS規格品とFIA規格品の価格差は約3万円だが、その3万円で10年間買い替えの心配なく競技に集中できるのであれば、払う価値は十分にあると筆者は思っている。

ラリー(スペシャルステージ)|アライ GP-5WP、GP-J3(FIA規格推奨)

スペシャルステージラリーでは、JIS規格以上に適合したヘルメットの着用が必須となる。HANSに関しては任意装着であり義務ではない。しかし、最初からラリー競技に出場することを目標としているならば、多少高額になってもFIA規格に適合したヘルメットを最初に購入することを筆者はおすすめする。理由はジムカーナやダートトライアルの項目で説明したものと同じだ。加えて、ラリーは他のカテゴリーと異なりオープンフェイス型のヘルメットが好まれる。これは競技特性上、視界を広く確保したいことと、走行中にドライバーとナビゲーターが会話する必要があるためである。バイク用のオープンフェイス型ではなく、ラリー用途として設計されたFIA規格に適合したヘルメットを選ぶのが無難な選択肢だろう。

サーキットトライアル|アライ GP-5W(FIA規格対応。HANS推奨)

サーキットトライアルでは、JIS規格以上に適合したヘルメットの着用が必須となる。HANSに関しては任意装着であり義務ではない。しかし、サーキットトライアルに出場するのであれば、FIA規格に適合したヘルメットとHANSの装着を強くすすめたい。理由は、出場する車種にもよるが速度域が非常に高くなるからだ。最初は規則上認められているJIS規格のヘルメットで出場しても問題はない。しかし、レベルが上がるのと同時に安全装備のアップグレードも必ず行ってほしい。

サーキットレース|アライ GP-6S(FIA規格必須。HANS必須)

サーキットレースでは、FIA規格に適合したヘルメットとHANSの着用が必須となる。数年前まではSNELL規格のみ適合のヘルメットも使用可能だったが、2025年現在は使用できないため注意が必要だ。筆者がおすすめするのは、アライ製のGP-6シリーズで、コストパフォーマンスに優れたヘルメットである。もしさらに性能の高いカーボン製ヘルメットの購入を考えている場合は、別の記事にまとめてあるのでそちらを読んでほしい。

カーボンヘルメットを紹介した記事

まとめ|ステップアップを見据えて最適なヘルメットを準備しよう

モータースポーツではカテゴリーによって求められる安全装備が大きく変わる。レンタルカートや広場トレーニングならSG規格で十分だが、Bライセンス競技ではJIS規格以上が必要となり、サーキットレースに挑戦するならFIA規格とHANSが必須となる。安全装備は後回しにされがちだが、最初にしっかり揃えておくことで安心して競技に集中できる。自分の参加目的と将来のステップアップを考えたうえで、最適なヘルメットを選んでほしい。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました