データロガーは本当に必要なのか?【2025年版】

コラム
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最近、自分が愛用しているモータースポーツ用データロガーのメーカー公式サイトを久しぶりに確認した。新製品やアップデート情報を定期的にチェックすることは、自分の走行スタイルを見直す上でも重要な習慣である。……というのは建前で、本音を言えば新製品情報を眺めるのが楽しいという理由が8割を占める。

私が初めてデータロガーを導入したのは、FJ1600に参戦した最初の年だった。当時は価格も高く、初心者が気軽に導入できるものではなかった。だが、時の流れとともに価格は下がり、性能は飛躍的に向上し、サーキットを走り始めたばかりの初心者でも手が届く存在となった。しかし現在は、円安や半導体不足といった要因により、価格が上昇傾向にある。導入のハードルは、再び高くなりつつあるように思われる。

では、そもそもデータロガーとは何か。そして、価格が上昇している今の時代に、初心者が本当に導入すべきものなのか。今回はデータロガーの基礎知識から代替手段、導入のタイミングまで、自身の経験を交えて紹介しよう。

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この記事の目次(クリックでジャンプ)

データロガーとは

データロガーとは、車両に取り付けた各種センサーから得られる情報を記録し、走行後に分析できる装置である。主なデータには、エンジン回転数、スロットル開度、水温、油温、油圧などの車両状態が含まれる。それらに加えて、加速度センサーやジャイロセンサーによって、車体の挙動も可視化できるようになっている。

中でもサーキット走行において重要なのは、ラップタイムの計測とその分析である。どの地点でブレーキを遅らせたか、どのラインが最速だったかなど、これまで感覚に頼っていた部分を数値で裏付けできるのが最大の利点だ。

プロのレーシングチームでは、こうしたデータを基にマシンのセットアップや戦略を練っている。アマチュアにおいても、活用次第で確実なタイムアップにつながるツールとなる。

GPSデータロガーの普及と進化

2010年頃からGPS機能を活用したデータロガーが登場したことで、従来のように多数のセンサーを取り付ける必要がなくなった。位置情報から速度や加速度、走行ラインを推定できるようになり、サーキットごとの座標を記憶させれば、ラップタイムの自動計測も可能となった。

この進化によって、データロガーは一気に身近な存在となった。当時3万円近くしていたラップタイマーに比べ、GPSロガーは4〜5万円で導入でき、機能面でも大きく優れていた。

さらに、従来の磁気センサー型タイマーでは使用できなかった一部のコースでも、GPSロガーであれば問題なく対応できる。現在は多くのロガーが主要サーキットの座標をプリセットしており、設定の手間すら不要となっている。

スマートフォンアプリの台頭

2018年頃からスマートフォンのGPS性能が飛躍的に向上した。これに伴い、スマホ単体でラップタイムの記録・可視化が可能なアプリが登場した。当初は「おもちゃ」程度の性能だったが、現在では有料アプリを中心に、精度と機能が大幅に向上している。

私自身はまだ実戦投入していないが、サーキット仲間の使用状況や取得データを見る限り、実戦レベルで使用できると感じている。

スマートフォンアプリの大きな利点は、初期投資が少なく済む点である。スマホホルダーに装着し、アプリを起動するだけで、GPSロギングが可能となる。これは特に、これからサーキット走行を始めようとするビギナーにとって大きな魅力である。

ただし、スマートフォンのGPSは環境に左右されやすく、精度にばらつきがあるのも事実である。競技志向で正確なデータ分析を行いたい場合は、専用機器の方が確実性は高いだろう。

おすすめのデータロガーとアプリ

アプリ

GPSLaps(Android版のみ)

スマートフォン内蔵GPS、またはBluetooth GPS受信機を使用してラップタイムを計測するアプリ。有料版(月額150円)ではBluetooth OBD2アダプターを用いた車両モニタリングも可能となる。

GPS Laps - Apps on Google Play
A laptimer using GPS (including Galileo, GLONASS, QZSS and other GNSS).

RaceChrono(iPhoneは有料版のみ)

GPSを利用したラップタイム計測、走行軌跡の記録、OBD2による車両情報のモニタリングに対応。さらにアクションカメラとの連携により、車載動画とログデータの合成も実現できる。

RaceChrono - Apps on Google Play
RaceChrono - The app for Motorsports
‎RaceChrono Pro
‎RaceChrono Pro は、汎用性の高いラップタイマー、データ・ログ、データ分析アプリで、従来のラップタイマーとデータロガーに代わり、特にモータースポーツ用に設計されています。 RaceChrono Pro アプリもビデオを記録し、...

GPSデータロガー本体

デジスパイス(DIG-SPICE 4)

コストパフォーマンスと分析ソフトの使いやすさに優れ、初心者からベテランまで幅広い層に支持されている。スマートフォンと接続することで、リアルタイムのラップタイマーとしても使用可能。

AIM SOLO2

高精度GPSと視認性の高い液晶画面を搭載。走行中にラップタイムを確認できる点が大きな魅力である。

AIM SOLO2 DL

SOLO2の機能に加え、ECUからの車両データも取得可能。より高度な分析が可能となり、中上級者に最適なモデルである。

AIM MyChron6

SOLOシリーズと異なり、内蔵バッテリーを搭載したカートやミニバイク向けモデル。第6世代ではBluetooth接続にも対応し、ウェアラブル端末で計測した心拍数を走行データと連携して記録できる仕様となっている。

初心者が選ぶべき最初の一歩

初心者にとって最も現実的な選択は、自分の目的と予算、周囲のサポート体制に応じて決めることである。

とにかく安く始めたいなら

ストップウォッチを使って、知人に手動でラップを記録してもらうのが、最もシンプルで確実な方法である。スマートフォンアプリでももちろん計測は可能だが、精度を求めるならば3,000円程度のストップウォッチを購入するのを推奨する。デメリットは、走行中にリアルタイムでタイムを確認できない点である。

ラップタイムの確認が主目的なら

リアルタイムでラップタイムを確認したい場合、GPS精度の高いスマートフォンとアプリの組み合わせで記録してみよう。コストを抑えつつ、一定の分析も可能となる。ただし注意したいのはスマートフォンの固定方法である。サーキット走行時の振動やG、万が一のクラッシュでも外れないよう、しっかりと固定してもらいたい。

本格的に分析したいなら

ラップタイムの記録・分析だけでは物足りなくなってきたら、GPSロガー本体の導入を検討しよう。サーキットごとの走りを詳細に見直せるため、タイムアップにも直結しやすい。

ステップアップの目安と導入タイミング

以下のような状況になったとき、データロガーの導入を検討するのが理想的である。

  • 自分の走行を客観的に見直したくなったとき
  • セクターごとのタイム差を分析したくなったとき
  • 他人と走行データを比較して学びたいと思ったとき
  • マシンの調子やセッティング傾向を掴みたいと思ったとき
  • 周囲に使い方を教えてくれる人がいる環境にあるとき

これらの条件が揃ったとき、データロガーは「ただの計測器」から「自分の成長を加速させる武器」へと変貌する。

データロガーの価値とは

データロガーの最大の価値は、感覚では分かりづらい課題を数値として可視化できる点にある。たとえば、同じコーナーでも「ブレーキングを5m変えたことで0.3秒短縮できた」といった変化を、定量的に把握することが可能となる。

また、走行データを仲間と共有し、比較・分析することで、自分にはないアプローチを学ぶきっかけにもなる。これは一人では得られない気づきにつながる貴重な経験である。

まとめ

データロガーは、モータースポーツの質を高め、タイムを削るための強力なツールである。ただし、その効果を最大限に引き出すには、データを読み解き、活かす姿勢が欠かせない。

今はスマートフォンアプリという手軽な選択肢から、プロフェッショナル仕様の高精度ロガーまで、自分のステージに合わせた選択が可能となっている。

最初から高額なツールを無理に導入する必要はない。必要になったタイミングで、必要なものを選べばよい。それが、長くモータースポーツを楽しむための賢いスタンスだと思う。

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