モータースポーツは体力がすべて――そう思われがちだが、少なくともアマチュアレベルでは話は違ってくる。
速さを決める要素は多く、マシン、セットアップ、経験、そして判断力。体力だけで順位が決まる世界ではない。
しかし「普通以下」の状態になってしまうと話は別。疲れやすい、集中が続かない、判断が遅れる――こうした要素は確実にラップタイムへ影響する。
今回、筆者自身の体重が過去最高を更新し、体調・体力ともに明確な低下を実感した。レーシングスーツが着られなくなるという現実的な問題も見えてきた。
そこで、まずは“普通の状態に戻す”ことを目的にダイエットを開始した。
この記事では、アマチュアレーサーにとって必要な体力の考え方と、無理なく続けるために始めた現実的なダイエット手法を整理していく。

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結論|アマチュアレーサーに必要なのは「普通の体力」で十分
結論はシンプルで、アマチュアレーサーに求められるのはアスリートレベルの身体能力ではない。
必要なのは、あくまで“普通に動ける体”であること。
トップカテゴリ――特にフォーミュラカーやハイグリップタイヤを使う領域では、首・体幹・持久力すべてが要求される完全なフィジカル競技になる。
しかしアマチュアカテゴリーでは、そこまでの身体能力がなくても走ること自体は成立する。技術や経験で補える余地が大きいのが、この競技の特徴でもある。
ただし、「普通以下」は確実に不利になる。
体重増加による運動性能の低下、疲労の蓄積、集中力の持続時間の短縮。これらはすべて、ドライビングに直接影響する要素であり、マシンやスキルではカバーしきれない部分でもある。
つまり目指すべきは、“鍛える”ことではなく“戻す”こと。
まずは標準体重・標準的な体力に戻す。それだけで走りの安定性と再現性は確実に改善する。
今回のダイエットは、その「普通に戻す」ための取り組みとしてスタートした。
なぜダイエットを始めたのか|完全に“普通以下”になっていた
きっかけは単純で、体が明らかに重くなっていた。
体重は74.2kg。これまでで最も重い数値に到達し、「ちょっと増えた」では済まないレベルに入っていた。ちなみに筆者の20代前半の体重は50kgだったので、約20年で20kg以上増えていることになる。
数値以上に問題だったのは体感の変化。
日常生活の中で疲れやすくなり、集中力の持続時間も短くなった。長時間の運転や作業のあとに残る疲労感も以前より明らかに強い。
さらに無視できないのが体力の低下。
以前なら問題なくこなせていた動きや作業が、徐々にきつく感じるようになってきた。これはトレーニング不足というより、単純に“ベースの体力”が落ちている状態に近い。
そして決定打になったのがレーシングスーツ。
現在使っているスーツはサイズオーダーで作ったもの。体型に合わせて作っている以上、太ればそのまま着られなくなる。
まだ余裕はあるものの、このまま増え続ければ確実にアウトというラインに近づいてきた。
ここまで来ると、「そのうち戻せばいい」という段階ではない。
すでに“普通の状態”から外れており、放置すればパフォーマンスにも直結する。
だからこそ今回、ダイエットを「やるかどうか」ではなく「やるしかないもの」としてスタートさせた。
レーサーに体力は必要か?|結論:プロとアマは別物

レーサー=体力勝負というイメージは間違っていないが、それはあくまでトップカテゴリーの話。
フォーミュラカーやハイレベルなツーリングカーでは、強烈な横Gと長時間の集中を支えるために、首・体幹・心肺機能すべてが求められる。ここでは完全にアスリートとしての身体が必要になる。
一方で、アマチュアカテゴリーは構造が違う。
走行時間、車両性能、タイヤ特性などの条件が異なるため、トッププロと同じレベルの身体能力がなくても成立する。
ライン取り、ブレーキング、セットアップの理解といった要素で十分に戦える余地がある。
ここがモータースポーツの面白さでもある。
純粋なフィジカル競技とは違い、身体的なハンデを完全に覆すことは難しくても、ある程度は他の要素で補える。
ただし、勘違いしてはいけないポイントがある。
「体力は不要」ではなく、「最低限でいい」というだけの話。
普通に動ける体力があること。
長時間集中できるコンディションであること。
走行後に極端な疲労を残さないこと。
このラインを下回ると、一気にパフォーマンスは崩れる。
つまりアマチュアに必要なのは、アスリートレベルではなく“平均的な人間の状態”。
そして現状は、その基準を明らかに下回っていた。
だから今回のダイエットは、強くなるためではなく「スタートラインに戻るため」の取り組みになる。
今回の目標|体重−10kgで「普通」に戻す
今回の目標はシンプルに、体重−10kg。
74.2kgから64kgまで落とす。あわせて体脂肪率は27.6%から21.5%まで下げる設定にした。
期間は半年。
6ヶ月で−10kg、1ヶ月あたり約−1.6kg、週ベースで見れば−0.4kg前後のペースになる。
急激に削るのではなく、無理なく落としながら確実に定着させるための現実的なスピード感を意識した。
数値だけ見るとそれなりに大きな減量に見えるが、狙っているのは極端な絞り込みではない。あくまで「普通に戻す」ラインで止める前提の目標設定になる。
身長は163cm。この条件だと適正体重は49.2〜66.4kgのレンジに収まる。
つまり現在の74.2kgは明確にオーバーしており、64kgという目標値は“標準の中に戻す”ための現実的なラインになる。
さらに、この数値には実体験の裏付けもある。
過去のレース戦績を振り返ると、最も安定して結果が出ていたのが64kg前後の時期だった。操作のキレ、集中力の持続、疲労の残り方、どれを取っても今より明らかにコンディションが良かった。
つまり今回の目標は、理論上の適正値に合わせたものではなく、「実際に走れていた状態」に戻すための数値でもある。
一方で体脂肪率については、やや現実寄りに設定した。
無理に絞りすぎれば食事制限が厳しくなり、継続性が落ちる。結果としてリバウンドやパフォーマンス低下につながる可能性もある。
そこで今回は、達成難易度と継続性のバランスを優先し、21.5%というラインを採用した。
見た目や数値を追い込みすぎるよりも、「無理なく維持できる状態」を作ることを重視している。
このダイエットの目的は、ピークパフォーマンスを作ることではない。
あくまで“普通の状態”に戻し、安定して走れるコンディションを取り戻すことにある。
今回のダイエットのテーマは「可視化」と「自動化」
今回のダイエットで最も重視しているのは、「どれだけ頑張るか」ではなく「どれだけ見える状態にするか」。
体重管理は感覚に頼った瞬間にブレる。
「今日はそんなに食べていないはず」「昨日は動いたから大丈夫」――こうした主観は簡単にズレるうえ、都合よく解釈されがちになる。結果として、気づいた時には増えているというパターンに入りやすい。
そこで必要になるのが可視化。
体重、体脂肪率、摂取カロリー、消費カロリー。このあたりを“記録して見える状態”にしておくことで、初めて現状を正しく把握できるようになる。
特に重要なのは、「結果」と「原因」をセットで追えること。
体重が増えたのか減ったのかという結果だけでなく、その前日に何を食べて、どれくらい動いたのかまで紐づけて見える状態にしておく。これができると、増減に対して毎回納得感が生まれる。
逆に言えば、この可視化ができていない状態では、ダイエットはほぼ運任せになる。
うまくいったとしても再現性がなく、崩れた時に修正が効かない。
もうひとつのポイントは、“手間をかけないこと”。
記録が面倒になると、その時点で継続が止まる。だから今回の前提は「自動で記録される環境を作る」こと。できるだけ何も考えずにデータが溜まる状態を作ることで、初めて継続性が担保される。
ダイエットそのものはまだ始まったばかりで、最終的に成功するかどうかは分からない。
ただ少なくとも、「見えないまま進めるよりは確実にマシ」という確信だけはある。
今回の取り組みは、この“可視化”と“自動化”を軸に進めていく。
可視化することが重要なのはラップタイムを削るのに似ている。
▶ モータースポーツの体組織計といっても過言ではないデータロガーについての記事はこちら。
導入①|体組成計で“何も考えずに記録する”

可視化の中でも、最優先に置いたのが体重と体脂肪の自動記録。
ここを手動にすると、ほぼ確実に続かない。
そこで導入したのが、スマートフォン連携型の体組成計「Anker Eufy Smart Scale A1」。乗るだけで体重・体脂肪率がアプリに自動記録され、グラフ化までされるタイプを選んだ。価格は1890円(セール価格で購入)。初期投資としてはかなり低いが、役割としてはダイエット全体の基盤になる。
▶ どの体組織計を買うべきか検討したブログ記事はこちら

この“何も考えずに記録される”という状態が重要。
朝に乗るだけでデータが蓄積され、後から振り返ることができる。入力の手間がないため、習慣化のハードルが極端に低い。
さらに大きいのが、変化が視覚的に分かる点。
日々の増減だけでなく、週単位・月単位のトレンドがグラフで見えるようになると、「ちゃんと落ちているのか」「停滞しているのか」が一目で判断できる。
ここで重要なのは、1日の増減に一喜一憂しないこと。
体重は水分量や食事内容で簡単にブレるが、グラフで見れば全体の流れははっきりする。短期のノイズではなく、長期の傾向で判断できるようになる。
体組成計は単なる計測機器ではなく、「継続のための装置」。
記録を自動化し、判断をデータに委ねる。この状態を作ることで、ダイエットの難易度は大きく下がる。
導入②|食事管理アプリで“ズレ”を修正する

体重の変化が「結果」だとすれば、食事は「原因」にあたる。
この原因を把握しない限り、なぜ増えたのか、なぜ減らないのかは分からないままになる。
そこで導入したのが食事管理アプリ。
食べたものを記録するだけで、摂取カロリーと栄養バランスが自動で算出される。感覚ではなく数値で把握できるため、思い込みとのズレがはっきりする。
実際に使ってみると、自分の食事がいかに偏っているかがよく分かる。
特に脂質は想像以上に過剰になりやすく、アプリ上でも毎日のように指摘されるポイントになっている。
ここで重要なのは、「完璧に守ること」ではない。
多少オーバーしても問題はなく、大事なのはそのズレを認識できているかどうか。
例えば、摂取カロリーが多かった日。
その事実が分かっていれば、夜にウォーキングを入れて調整する、翌日の食事を軽めにする、といった対応が取れる。逆に何も記録していなければ、修正のしようがない。
また、体組成計のデータと組み合わせることで、「結果と原因」がつながる。
体重が増えた日に何を食べていたのか、逆に順調に落ちている時の食事はどうだったのか。この因果関係が見えるようになると、再現性のある調整が可能になる。
食事管理アプリは、制限するためのツールではなく“軌道修正のためのツール”。
大きく崩さず、小さくズレを直し続ける。この運用を回すために欠かせない存在になる。
実践内容|ゆるめでも痩せる設計にしている
今回のダイエットは、いわゆる“頑張る系”ではなく“崩れない設計”を優先している。
極端な食事制限やハードなトレーニングはあえて入れていない。理由はシンプルで、続かないから。
基本の考え方は、「食べすぎたら調整する」だけ。
普段の食事は大きく変えず、外食も普通に行く。ただし、その日の摂取カロリーと活動量は必ず確認し、明らかにオーバーしている場合だけ帳尻を合わせる。
具体的な調整手段はシンプル。
- 夜にウォーキングを入れる
- 翌日の食事量を軽くする
- 脂質を意識的に抑える
どれも負荷としては軽いが、可視化されたデータをもとに実行することで精度が上がる。
「なんとなく控える」のではなく、「今日はオーバーしているからこれだけ調整する」という判断になるため、無駄がない。
もうひとつ重要なのが、“ゼロか100か”にしないこと。
完璧にやろうとすると、崩れた瞬間に一気にモチベーションが落ちる。今回は最初から7割程度の運用を前提にし、多少のズレは許容する設計にしている。
結果として、ストレスはほぼない。
我慢している感覚も薄く、日常の延長線上で回せている。ダイエットを「特別なこと」にしないことが、そのまま継続性につながっている。
ダイエット開始2週間の結果|すでに変化は出ている
ダイエット開始から2週間。現時点では順調に推移している。
ペースとしては、1週間あたり−0.5kgといったところ。
設定した目標(週−0.4kg前後)と比較しても、やや早いくらいのスピードで落ちている。
重要なのは、この結果が“無理をしたものではない”点。
食事制限は緩く、運動も必要に応じたウォーキング程度。それでも数字が動いているということは、単純にこれまでの生活がオーバーカロリーだったという裏返しでもある。
一方で、課題もはっきり見えてきている。
食事管理アプリ上では脂質の摂取過多が頻繁に指摘されており、ここは今後の改善ポイントになる。現状はカロリー収支で帳尻が合っているため体重は落ちているが、内容としてはまだ最適化の余地がある。
ただ、方向性としては問題ない。
体重は右肩下がり、調整の手応えもある。この状態を維持しながら、徐々に精度を上げていくフェーズに入っている。
現時点では「成功」と断言する段階ではないが、少なくとも“再現性のあるやり方”にはなっている。
あとはこれを崩さずに積み重ねていくだけになる。
まとめ|まずは“普通”に戻す、それが一番効く
今回のダイエットでやっていることは、特別なことではない。
極端な食事制限も、ハードなトレーニングも入れていない。やっているのは、体重と食事を可視化し、ズレを小さく修正し続けているだけ。
それでも体重は落ち始めている。
つまりこれまでの状態が“普通ではなかった”ということに尽きる。
アマチュアレーサーにとって重要なのは、アスリートになることではない。
まずは標準体重、標準的な体力、安定したコンディション。この“普通の状態”に戻すことが、結果的に一番パフォーマンスに効く。
逆に言えば、ここを外している限り、どれだけテクニックやセッティングを詰めても限界が来る。
土台が崩れている状態で上積みを狙っても、再現性が出ない。
だから今回のテーマはシンプル。
削るべきは余分な体重であり、足すべきは特別なトレーニングではない。
まずは普通に戻す。
そのうえで、必要なら次を考える。
この順番を崩さないことが、遠回りに見えて一番効率がいい。










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