「N1」モタスポ用語ナビ

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N1とは?

「N1」とは、JAF(日本自動車連盟)が定めるレース車両規定に基づいたナンバー無しの競技専用車両によるカテゴリーを指す。市販車をベースとしつつ改造範囲が制限され、耐久レースやクラブマンレースで長く親しまれてきた。

特に1990年代から2000年代初頭にかけて富士スピードウェイで開催された「N1耐久シリーズ」が有名であり、これは後に「スーパー耐久シリーズ(ST)」へと発展した。現在も「N1規定」に基づいたレースクラスは各地のサーキットで存続している。

N1の特徴

ナンバー無し・競技専用車両

N1車両は市販車をベースに製作されるが、ナンバープレートを外し、内装を撤去して軽量化を行ったうえで、ロールケージや消火器など安全装備を装着する。大幅なチューニングは認められず、改造範囲は制限されているため、市販車に近い性能差でレースを楽しめる点が大きな特徴である。

耐久レース文化を育んだカテゴリー

N1はスプリントではなく耐久レースを主体に発展した。富士スピードウェイでは10時間や24時間といった長時間レースが行われ、ドライバー交代やピット戦略を含めた総合力が問われた。これは後のスーパー耐久へと直結し、日本の耐久レース文化の礎となった。

多彩な車種の混走

GT-Rやランサーエボリューション、インプレッサといったハイパフォーマンスモデルから、シビックやヴィッツといったコンパクトカーまで、幅広い車種がクラス分けの中で競い合った。観客にとっては身近な市販車がサーキットで全開走行する姿が魅力であり、人気を支える要因であった。

N1と他カテゴリーとの違い

Nゼロとの違い

「Nゼロ」はナンバー付きの状態で参戦可能な現行カテゴリーであり、公道走行もできる車両を使う。一方で「N1」はナンバーを外した競技専用車両を用いる点が決定的に異なる。

NR-Aとの違い

「NR-A」はマツダ・ロードスター限定のナンバー付きワンメイクレースであり、車種を統一してイコールコンディションを重視している。それに対して「N1」は複数メーカーの車両が混走するマルチメイク形式で、車種ごとの特性を活かしたレース展開となる。

現在も存在するN1規定カテゴリー

かつての「N1耐久」はスーパー耐久へと発展したが、N1規定のレースクラスは今も全国各地で現役である。代表的なものは以下の通り。

  • 富士チャンピオンレース(富士スピードウェイ)
    FCR-86/BRZ、N1500/N1000、ロードスターN1など、複数のクラスがJAF N1規定に基づいて開催されている。
  • もてぎチャンピオンカップ(モビリティリゾートもてぎ)
    フィットをベースとした「もてぎFIT」がN1規定に則り実施されている。
  • 岡山チャレンジカップ(岡山国際サーキット)
    「N1-86」「N1ロードスター(NA)」といったクラスが存在し、継続的にレースが行われている。
  • 北海道クラブマンカップ(十勝スピードウェイ)
    「N1-1000」クラスが設けられ、ヴィッツなどの小排気量車が参戦している。

これらのカテゴリーでは、JAFが定めるN1規定の範囲で製作された競技専用車両が現在も活躍しており、アマチュアからベテランまで幅広い層に門戸を開いている。

N1の歴史と現在

N1は1990年代に大きな盛り上がりを見せ、特に富士スピードウェイでの耐久シリーズが象徴的な存在であった。その後、公式シリーズとしてのN1耐久はスーパー耐久へ移行し、名称としては姿を消した。

しかし、N1規定そのものはJAFの競技規則に現在も存在し、地方選手権やサーキットのクラブマンシリーズなどで継続して活用されている。つまり、N1は「過去のカテゴリー」であると同時に、「今も現場で息づいている規定カテゴリー」でもある。

まとめ

「N1」とは、JAF規定に基づくナンバー無し・市販車ベースの競技専用車両によるレースカテゴリーである。耐久レース文化を育み、スーパー耐久の基盤を築いた歴史を持ちながら、現在も全国のクラブマンレースやワンメイクレースで現役のクラスとして続いている。

改造範囲が限られた車両で、耐久からスプリントまで幅広く挑戦できるN1は、今も多くのドライバーにとって成長の場であり続けている。

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