サーキット走行中の熱中症は命取り!原因とリスクを解説
真夏のサーキットは、気温以上に過酷な環境である。舗装路からの照り返し、クルマの熱、レーシングギアの密閉性が相まって、炎天下以上の体感温度となる。私も初めて真夏に走ったとき、あまりの暑さに意識が朦朧としたことがある。
特に長時間のフリー走行やレース本番となると、気力と集中力だけでは乗り切れない。今回は、サーキット走行中に熱中症を防ぎ、集中力を保つための装備と習慣について紹介する。
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熱中症リスクが高い理由|レーシングスーツ・ヘルメット・車内環境
サーキットでは、想像以上に熱がこもる。レーシングスーツとヘルメットは耐熱性を重視した設計であり、熱を通さないということは熱も逃げにくく通気性が悪い。加えて、競技中は窓を閉めるのが原則であり、外気を取り込むことができない。さらに、水温を安定させるためにヒーターをオンにするドライバーも少なくない。
その結果、車内の気温は一気に上昇し、汗が止まらない状態になる。座っているだけでも体力が奪われる環境で、横Gに耐えながらマシンを繊細にコントロールするための集中力が求められ、熱中症リスクは極めて高い。
熱中症対策①|薄手のレーシングスーツと通気性ヘルメットの選び方
まずは装備の見直しから始めたい。私が効果を実感したのは薄手のレーシングスーツだ。少し高額になるが、15万円を超えるレーシングスーツは生地が薄手で通気性能が増す。また旧規格(FIA8856-2000)であれば、薄手のレーシングスーツの種類が増える傾向にある。真夏の走行用に1着準備しておくのもいいだろう。
ヘルメット内の蒸れ対策も見逃せない。フォーミュラー系やカートに限定されるが、ヘルメットのインテークの数は走行中の快適性を大きく左右する。Arai製のヘルメットであればGP-6S(1個)よりもGP-6W(2個)やGP-6(3個)を選ぶとインテークの数が増える。地味だが効果が絶大なので、ヘルメットの買い替えの際は検討してみてほしい。
熱中症対策②|走行合間の冷却ルーティンで体温管理
熱中症は一度発症すると、その日の走行は中止せざるを得ない。だからこそ、走行時間以外の過ごし方にも工夫が必要となる。
私はピットに戻るたび、冷凍したスポーツドリンクを少しずつ口にしながら、首筋や脇など血管が太い部位に凍ったペットボトルを当てて体を冷却させることを習慣にしている。それでも暑さで朦朧とする場合は、サーキット施設内のエアコンの効いた部屋に退避することもある。
真夏のサーキットに行く際は保冷バッグを常備し、サーキット施設内でエアコンが効いている場所を必ずチェックしておこう。
熱中症対策③|クールベスト・ハイドレーション活用術
近年は屋外作業者用の熱中症対策グッズが進化している。特におすすめなのが、保冷剤を入れるポケット付きのクールベストだ。厳密にはFIA公認装備ではないので、着用の可否はレース主催者の判断になるが、30分以上連続走行する耐久レースなどでは持っておきたいアイテムである。
また、登山やサイクリング用の吸水ボトル(ハイドレーション)を半解凍させてお腹に抱えて走るのも熱中症対策となる。飲み口を咥えた状態でヘルメットをかぶれば、走行中に水分補給も可能となる。
体調セルフチェック|走行前後に確認したい5つのポイント
サーキットに来ると、暑さに慣れた強者たちが涼しい顔をしているから「暑さで辛いのは自分だけかな?」「もっと頑張らなきゃ駄目かな?」と感じてしまうが、無理だけは絶対にしてはいけない。
走行の前後には以下の5つのポイントを自分に問いかけてみてほしい。
- 頭痛やめまいはないか?
- 手足がしびれていないか?
- 汗が極端に少ない、または止まっていないか?
- 意識がぼんやりしていないか?
- 水分を摂っているのに尿が少ないか?
一つでも当てはまったら、走行を中止して休むようにしよう。モータースポーツは体調管理も実力のうち。
まとめ|万全の準備で真夏のサーキットを攻め抜こう
夏のサーキットは、技術よりも体調管理が明暗を分ける場面も多い。モータースポーツは特に集中力を使うスポーツだ。体調の良し悪しは結果に直結すると言っていい。
水分補給、冷却装備、そして習慣。この3つを意識することで、暑さの中でも本来のパフォーマンスを発揮できるようになる。
事前準備は走行テクニックと同じくらい重要な要素。「今日は限界まで攻めきった」と胸を張って言えるよう、体のケアにも全力を尽くしてもらいたい。
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