「レーシングスーツ」モタスポ用語ナビ

レーシングスーツとは？

レーシングスーツとは、自動車レースやカート競技においてドライバーが着用する安全装備である。一般的な衣類とは異なり、火災や高温、摩擦といった過酷な状況から身体を守る目的で設計されている。

見た目のデザインよりも、難燃性や耐熱性、耐久性といった機能面が重視される傾向にある。多くのレースカテゴリーではレーシングスーツの着用が義務付けられており、FIAなどの公認規格を満たしていなければ参加できない場合が多い。

レーシングスーツは多層構造を採用しており、高い安全性と快適性を両立させている。一般的には以下の3層で構成されている。

これらの層が重なり、軽量でありながら高い保護性能を実現している点が特徴である。

レーシングスーツにおいて最も重視されるのが難燃性と耐熱性である。万が一の火災時に、数秒間の直火にも耐える性能が求められる。

使用される代表的な素材が「ノーメックス（NOMEX）」である。ノーメックスは自己消火性を持ち、火元が離れた瞬間に燃焼が止まる特性がある。この性質が、ドライバーの命を守る貴重な時間を稼ぐ役割を果たす。

レーシングスーツの肩には「肩ベルト」と呼ばれるストラップが取り付けられていることが多い。これは見た目の装飾ではなく、事故や火災発生時にレスキュー隊がドライバーを迅速に車外へ引き出すための救助装備である。

このベルトは、安全性を高めるために設計された重要なディテールの一つである。

レーシングスーツには、腰ベルト部分や腹部に「名前」や「血液型」が刺繍またはパッチで記載されていることが多い。

これはファッション的な要素ではなく、緊急時にドライバーの身元確認や医療処置を円滑に行うためのものである。特に意識不明や重傷の状態に陥った場合、血液型の情報があることで迅速な処置が可能となる。

レーシングスーツの選び方においては、見た目以上にフィット感が重要である。以下の点に注意することで、安全性と操作性の両立が可能となる。

ハンドル操作やペダルワークに支障が出ないよう、動きを妨げないサイズ感が理想である。

車体の挙動を身体で感じ取りやすくするためには、腰の密着感が重要となる。これにより路面の変化に素早く反応しやすくなる。

レーシングスーツには「カート用」と「四輪用」の2種類が存在する。それぞれ仕様や目的が異なるため、用途に応じた選択が必要となる。

カートレースでは火災のリスクが比較的低いため、難燃性は求められていない。その代わりに、転倒時の摩擦や擦り傷から身体を守る耐摩耗性に優れている。

また、通気性や軽量性が高く、夏場のレースでも快適に走行できる設計となっている。家庭で洗える素材を使用している製品も多く、メンテナンス性に優れている点も特徴である。

四輪レースでは火災リスクが高いため、FIA規格に準拠した難燃性スーツが必要となる。素材にはノーメックスなどの高機能繊維が使用され、多層構造によって高い安全性を確保している。

四輪用スーツは一般的に価格が高めで、洗濯も専門業者によるケアが推奨されている。誤ってカート用スーツを四輪レースで使用すると、競技規則違反になる可能性があるため注意が必要である。

JAF公認の公式レースや国際レースに出場する場合、レーシングスーツには特定の規格が求められる。代表的なものは以下の通りである。

　国際自動車連盟（FIA）によって定められた難燃性能規格であり、国内外の多くの公式レースで使用が義務付けられている。スーツの内側に縫い付けられたタグで確認可能である。

レースごとに要求される規格は異なるため、出場前には必ず競技規則を確認する必要がある。

レーシングスーツは単なるスポーツウェアではなく、ドライバーの命を守るための重要な安全装備である。難燃性や耐熱性をはじめ、肩ベルト、フィット感、素材選びなど、細部にまで配慮された設計となっている。

特に、カート用と四輪用では構造や性能、価格帯が大きく異なるため、自分が参加する競技に適したスーツを選ぶことが不可欠である。

また、インナーウェアやスーツの規格についても正しく理解することで、安全かつ安心してレースに臨むことができるだろう。

レーシングスーツ選びからモータースポーツライフは始まる。安全性と快適性を兼ね備えた一着を選び、存分にレースを楽しもう。