サーキット走行を始めると、必ず一度はこんな疑問にぶつかる。
「データロガーって、本当に必要なのか?」
「GPSロガーとスマホアプリ、結局どちらを選べばいいのか?」
走行会やミニサーキットの現場を見渡すと、本格的なGPSデータロガーを装着している車両もあれば、スマートフォンをダッシュボードに固定して走っている人もいる。一方で、何も付けずに“感覚だけ”で走っているドライバーも少なくない。
選択肢は増えた。
だがその分、初心者ほど「どこまでやれば正解なのか」が分かりにくくなっているのが実情である。
私自身、初めてデータロガーを導入したのはFJ1600に参戦した最初の年だった。
当時は価格も高く、明確な目的意識がなければ手を出しにくい装備だったが、現在はGPSロガーの進化とスマートフォン性能の向上により、状況は大きく変わっている。
一方で、円安や半導体不足の影響もあり、導入コストが再び上がりつつあるのも事実だ。
では今の時代、サーキット走行を始めたばかりの初心者にとって、データロガーは「必須装備」なのか、それとも「まだ不要」なのか。
そして、導入するとしたらGPSロガーとスマホアプリ、どちらが現実的な選択なのか。
本記事では、JAF公認レース出場経験をもとに、データロガーの基礎知識から、GPSロガーとスマホアプリの違い、初心者が導入を検討すべきタイミングと代替手段までを整理して解説する。
「自分は今、どこまでやればいいのか」
その判断ができるようになることを、本記事のゴールとしたい。

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目次(クリックでジャンプ)
データロガー(DataLogger)とは何か?車・サーキット走行で使われる理由

データロガーとは、サーキット走行を「感覚」ではなく「数値」で振り返るための計測装置である。
車両に取り付けた各種センサーから得られる情報を数値として記録し、後からデータで見ることができる。
主なデータには、エンジン回転数、スロットル開度、水温、油温、油圧などの車両状態が含まれる。それらに加えて、加速度センサーやジャイロセンサーによって、車体の挙動も可視化できるようになっている。
中でもサーキット走行において重要なのは、ラップタイムの計測とその分析である。どの地点でブレーキを遅らせたか、どのラインが最速だったかなど、これまで感覚に頼っていた部分を数値で裏付けできるのが最大の利点だ。
プロのレーシングチームでは、こうしたデータを基にマシンのセットアップや戦略を練っている。アマチュアにおいても、活用次第で確実なタイムアップにつながるツールとなる。
サーキットロガーとは何を指す?GPSロガー・ラップタイマーとの違い
サーキットロガーとは、主にGPSを用いてラップタイムや走行ライン、速度変化などを記録・分析する計測機器の総称として使われる言葉である。
一般的には「GPSデータロガー」や「ラップロガー」とほぼ同義で使われることが多く、サーキット走行の振り返りやタイムアップを目的として使用される。
GPSロガー・ラップタイマー・サーキットロガーの違い
走行後の分析まで行いたいならGPSロガー、走行中のタイム確認だけならラップタイマーで役割が異なる。
サーキット走行で使われる計測機器には、いくつかの呼び方が存在する。
混同されがちだが、それぞれの役割は次のように整理できる。
GPSロガーは、GPS情報をもとにラップタイムや走行ライン、速度変化などを記録し、走行後に詳しく分析することを目的とした機器である。
▶詳しくは「GPSデータロガーの仕組み|タイム・速度・Gが分かる理由を初心者向けに解説」
ラップタイマーは、主に走行中にラップタイムを確認するための装置であり、分析機能は限定的なものが多い。
一方で「サーキットロガー」という呼び方は、これらを厳密に区別する名称ではなく、サーキット走行用の計測機器全般を指す総称として使われるケースが多い。
サーキットロガーの役割を理解したうえで、実際にどのようにデータを読み、走りに活かすかが重要になる。データの基本的な見方や、初心者が最初に注目すべきポイントについては、以下の記事で詳しく解説している。
▶詳しくは「GPSデータロガー超入門|初心者が最初に身につけるべき“タイムの読み方”」
GPSデータロガーの仕組みと進化|なぜサーキットで主流になったのか
GPSデータロガーは位置情報をもとに速度・G・走行ラインを算出し、手軽かつ高精度な分析を可能にしたことで主流となった。
2010年頃からGPS機能を活用したデータロガーが登場したことで、従来のように多数のセンサーを取り付ける必要がなくなった。位置情報から速度や加速度、走行ラインを推定できるようになり、サーキットごとの座標を記憶させれば、ラップタイムの自動計測も可能となった。
この進化によって、データロガーは一気に身近な存在となった。当時3万円近くしていたラップタイマーに比べ、GPSロガーは4〜5万円で導入でき、機能面でも大きく優れていた。
さらに、従来の磁気センサー型タイマーでは使用できなかった一部のコースでも、GPSロガーであれば問題なく対応できる。現在は多くのロガーが主要サーキットの座標をプリセットしており、設定の手間すら不要となっている。
スマホアプリとGPSロガーの違いは?サーキットではどこまで使えるのか
スマホアプリは低コストな入門手段として有効だが、安定性と分析精度では専用GPSロガーに差がある。
2018年頃からスマートフォンのGPS性能が飛躍的に向上した。これに伴い、スマホ単体でラップタイムの記録・可視化が可能なアプリが登場した。当初は「おもちゃ」程度の性能だったが、現在では有料アプリを中心に、精度と機能が大幅に向上している。
私自身はまだ実戦投入していないが、サーキット仲間の使用状況や取得データを見る限り、実戦レベルで使用できると感じている。
スマートフォンアプリの大きな利点は、初期投資が少なく済む点である。スマホホルダーに装着し、アプリを起動するだけで、GPSロギングが可能となる。これは特に、これからサーキット走行を始めようとするビギナーにとって大きな魅力である。
ただし、スマートフォンのGPSは環境に左右されやすく、精度にばらつきがあるのも事実である。競技志向で正確なデータ分析を行いたい場合は、専用機器の方が確実性は高いだろう。
サーキットで使えるおすすめGPSロガー&アプリ【2025年版】
用途と走行スタイルに合った機材を選べば、GPSロガーもスマホアプリも実戦レベルで活用できる。
実際にサーキット走行で使用実績のあるGPSロガー本体とスマホアプリを、用途別に紹介する。
アプリ
GPSLaps(Android版のみ)
スマートフォン内蔵GPS、またはBluetooth GPS受信機を使用してラップタイムを計測するアプリ。有料版(月額150円)ではBluetooth OBD2アダプターを用いた車両モニタリングも可能となる。
RaceChrono(iPhoneは有料版のみ)
GPSを利用したラップタイム計測、走行軌跡の記録、OBD2による車両情報のモニタリングに対応。さらにアクションカメラとの連携により、車載動画とログデータの合成も実現できる。

GPSデータロガー本体
デジスパイス(DIG-SPICE 4)
コストパフォーマンスと分析ソフトの使いやすさに優れ、初心者からベテランまで幅広い層に支持されている。スマートフォンと接続することで、リアルタイムのラップタイマーとしても使用可能。
AIM SOLO2
高精度GPSと視認性の高い液晶画面を搭載。走行中にラップタイムを確認できる点が大きな魅力である。
AIM SOLO2 DL
SOLO2の機能に加え、ECUからの車両データも取得可能。より高度な分析が可能となり、中上級者に最適なモデルである。
AIM MyChron6
SOLOシリーズと異なり、内蔵バッテリーを搭載したカートやミニバイク向けモデル。第6世代ではBluetooth接続にも対応し、ウェアラブル端末で計測した心拍数を走行データと連携して記録できる仕様となっている。
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あなたはどこに当てはまる?データロガー導入ステージ別の考え方
サーキット走行におけるデータロガーの必要性は、
「経験年数」ではなく「走行との向き合い方」によって変わる。
まずは、自分がどの段階にいるのかを整理してみよう。
とにかく走行会を楽しみたい人|まずは“走ること”に集中する段階
まだサーキット走行そのものに慣れていない段階では、
データロガーは必須ではない。
ライン取りやブレーキングを意識するだけで精一杯であれば、
無理に数値を追いかける必要はないだろう。
この段階で重要なのは、
「安全に走り切ること」と「走る楽しさを知ること」である。
ラップタイムはストップウォッチや簡易計測で十分対応できる。
▶ データロガーはまだ早い?向いている人・向かない人をタイプ別に解説
毎回の走行を振り返りたい人|タイムの“理由”が気になり始めた段階
走行後に
「なぜ今日は速かったのか」
「どこでロスしているのか」
と考え始めたなら、データロガー導入を検討する価値がある。
この段階では、
スマホアプリやエントリー向けGPSロガーでも十分に学びが得られる。
重要なのは高価な機材ではなく、
“データを見て考える習慣”を身につけることだ。
▶ GPSデータロガー超入門|初心者が最初に身につけるべきタイムの読み方
レース・タイムアタックを意識し始めた人|継続的な成長を求める段階
走行会だけでなく、
レース参加やタイムアタックを視野に入れ始めた段階では、
専用GPSデータロガーの導入が現実的な選択肢となる。
セクターごとの比較や、
他人の走行データとの照合が可能になることで、
感覚だけでは到達できなかった改善ポイントが見えてくる。
このフェーズでは、
「どのロガーを選ぶか」「どう設置するか」も重要な要素になる。
▶ GPSデータロガーの設置位置はどこが無難?理想と現実を解説
初心者が最初に選ぶべきデータロガーは?目的・予算別の最適解
データロガー選びは「何を知りたいか」と「いくら出せるか」を先に決めることで、失敗を避けられる。
とにかく安く始めたい人 → ストップウォッチ
ストップウォッチを使って、知人に手動でラップを記録してもらうのが、最もシンプルで確実な方法である。スマートフォンアプリでももちろん計測は可能だが、精度を求めるならば3,000円程度のストップウォッチを購入するのを推奨する。デメリットは、走行中にリアルタイムでタイムを確認できない点である。
ラップタイムの確認を目的とする人 → スマホアプリ
リアルタイムでラップタイムを確認したい場合、GPS精度の高いスマートフォンとアプリの組み合わせで記録してみよう。コストを抑えつつ、一定の分析も可能となる。ただし注意したいのはスマートフォンの固定方法である。サーキット走行時の振動やG、万が一のクラッシュでも外れないよう、しっかりと固定してもらいたい。
本格的に分析したい人 → 専用データロガー
ラップタイムの記録・分析だけでは物足りなくなってきたら、GPSロガー本体の導入を検討しよう。サーキットごとの走りを詳細に見直せるため、タイムアップにも直結しやすい。
データロガー導入のタイミングはいつ?ステップアップの目安
走行を感覚だけで説明できなくなった瞬間が、データロガー導入を考える最適なタイミングである。
以下のような状況になったとき、データロガーの導入を検討するのが理想的である。
- 自分の走行を客観的に見直したくなったとき
- セクターごとのタイム差を分析したくなったとき
- 他人と走行データを比較して学びたいと思ったとき
- マシンの調子やセッティング傾向を掴みたいと思ったとき
- 周囲に使い方を教えてくれる人がいる環境にあるとき
これらの条件が揃ったとき、データロガーは「ただの計測器」から「自分の成長を加速させる武器」へと変貌する。
データロガーがもたらす価値とは?走行データ分析の重要性
データロガーの価値は、タイムそのものよりも「なぜ速くなったか」を説明できる点にある。
たとえば、同じコーナーでも「ブレーキングを〇メートル変えたことで0.3秒短縮できた」といった変化を、定量的に把握することが可能となる。
また、走行データを仲間と共有し、比較・分析することで、自分にはないアプローチを学ぶきっかけにもなる。これは一人では得られない気づきにつながる貴重な経験である。
まとめ|サーキット走行は目的に合ったデータロガーから始めよう
データロガーは、サーキット走行において必ずしも最初から必要な装備ではない。
走行を楽しむこと自体が目的であれば、感覚と経験を積み重ねるだけでも十分に意味がある。
一方で、
「なぜ今日は速かったのか」
「どこでタイムを落としているのか」
と考えるようになった瞬間から、データロガーは走りを整理するための有効な手段となる。
数値で振り返ることで、これまで曖昧だった感覚に理由を与えられるようになるからだ。
現在は、スマートフォンアプリという手軽な選択肢から、
高精度なGPSデータロガーまで、段階に応じたツールが揃っている。
大切なのは、他人の装備に合わせることではなく、
「今の自分に必要かどうか」を理解したうえで選ぶことである。
最初から完璧な装備を揃える必要はない。
走り続ける中で必要性を感じたとき、
そのときに正しい選択ができれば十分だと思う。
この先、データをどう読み、どう走りに活かしていくか。
もし興味が湧いたなら、次の記事がそのヒントになるはずだ。
データロガーをもう一歩深く知りたい人へ|次に読むべき記事
ここまで読んで、
「データロガーを使う意味は分かったが、まだ不安や迷いがある」
と感じた人は、次の記事から順に読み進めてみてほしい。
①【初心者向け】まずは“考え方”を整理したい人
データロガーが 自分に向いているのか/まだ早いのかを整理したい場合は、この1本から読むのがおすすめだ。
②【初心者〜初級者】データの見方を最低限理解したい人
「データを取っても、どう見ればいいのか分からない」
そんな不安を解消するために、初心者が最初に見るべきポイントだけをまとめている。
③【初級者〜中級者】実際に使う前提で準備を進めたい人
「使うと決めたなら、失敗したくない」
という段階に進んだら、設置位置や現実的な落としどころを把握しておこう。



































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